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なんの気負いもなく、中華屋『南チャン』の暖簾をくぐって、普通に入ってきた人物を見て、留守番をしていた3人組は、思わず大声をあげた。
「シンさん! シンさんじゃないですか」
ポチは椅子をならして立ち上がり、タマは台拭きを投げ捨てて駆けてくる。
厨房にいたポン太は、油染みたエプロンをかなぐり捨てて、カウンターを回って走り寄ってきた。
シンの前にお行儀よく並んで立った3人組は、紅潮した顔で、シンに話しかける。
「一年間も姿をくらましちまって、一体どこで何してたんです?」
興奮する三人組を手で制しておいて、シンは低く尋ねた。
「オヤジさんは?」
三人組は顔を見合わせる。
タマが代表してシンに答えた。
「最近オヤジさん、女にいれあげてましてね。女がやってる小料理屋に入り浸りで帰ってこないんですよ」
さすがのシンも、驚いて目を丸くした。
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