1/7
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ

なんの気負いもなく、中華屋『南チャン』の暖簾をくぐって、普通に入ってきた人物を見て、留守番をしていた3人組は、思わず大声をあげた。 「シンさん! シンさんじゃないですか」 ポチは椅子をならして立ち上がり、タマは台拭きを投げ捨てて駆けてくる。 厨房にいたポン太は、油染みたエプロンをかなぐり捨てて、カウンターを回って走り寄ってきた。 シンの前にお行儀よく並んで立った3人組は、紅潮した顔で、シンに話しかける。 「一年間も姿をくらましちまって、一体どこで何してたんです?」 興奮する三人組を手で制しておいて、シンは低く尋ねた。 「オヤジさんは?」 三人組は顔を見合わせる。 タマが代表してシンに答えた。 「最近オヤジさん、女にいれあげてましてね。女がやってる小料理屋に入り浸りで帰ってこないんですよ」 さすがのシンも、驚いて目を丸くした。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!