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 僕は胸の鼓動が早くなるのを感じた。それは、朝日が昇らない理由を理解したことと、僕の奥底に眠る恐怖心が目覚めそうな感覚に陥ったからだ。 まるで僕がこの世界を創ってしまった、そんな感覚に陥ったのかもしれない。 けれど、それとは違う何かが僕の奥底から吹き出し、脳内を支配する。 真っ黒なもう一人の僕の姿が断片的に浮かぶ。 「ヒト○カ○○ル」  口を手で塞ぎ、僕は心の中で叫んだ。さっき取り払ったタオルケットを頭から被り、体中が震える。真っ黒いそいつの存在は僕にとって恐怖だった。  もう少し記憶を遡ることにする。  そいつと初めて出会ったのは、今から一年前の夏の日だった。 僕は自分の頭上に燦々と輝く太陽の下、友人と一緒にサッカーをしていた。そして、頭上にあった太陽が西に傾いた時に、サッカーをやめ、僕たちは家に帰ることにした。僕の友人はこの公園を挟んで真反対に家があるため、いつもここでお別れをする。 「じゃあまた」別れる時の決まり文句みたいなものを言って、僕はいつも通り西日を目指して歩く。僕のそいつは真後ろにずっと伸びて、しっかりと僕についてきていた。 この時点のそいつは、話すこともなければ、普段それほど意識するものでもなかった。 それが一般的なそいつの見方である。
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