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そして、昨日――。
そいつは本性を晒し、僕を飲み込もうとした。初めて会った頃のような恐怖と不愉快な感覚を僕にもたらす。黒い帯状のそいつと僕は交錯した。どうにか抵抗し難を逃れた僕の目の前に、豹変したそいつはいた。
恐怖心に取り付かれた人間の決断は即決だ。恐怖に怯えながらも、必死にそいつの名前を呼んで消えろと願った。けれど、その願いは叶うことなく、そいつは僕に迫ってくる。何でもいいからこの状況から解放されるために打開策を考えようと全神経を研ぎ澄ます。
僕はあることを閃いた。
僕は太陽が消えろと泣き叫んだ。
叫び終わると、全身の力が抜け、ペットに倒れこむ。
もう、そいつの気配はしない。
安堵と全体力を使い果たした僕は死んだように眠った。
そして、その願いは届き、今こうやって太陽の昇らない世界に僕はいる。
ちょっと想像してみる。もし、そいつが今も僕のそばにいたら、僕はどうなっていたのだろうか。おそらく、今と変わらずということは絶対にないだろう。何かしらの厄介事になっていたことは容易に想像できる。
僕は真っ暗な部屋を見渡す。
暗い以外に昨日の世界と特に変わったところはなかった。
どうせ世界が変わってしまったのだから、誰かに本当のことを伝えても良いかなとも思ったけど、やっぱり僕にそんな勇気はない。このことは墓場までもっていくと前に誓ったはずだ。いや、あの時はまさかこうなるとは思ってもいなかったけれども。
そう、僕は太陽という存在を自分の都合だけで世界から奪い取った罪人。
言わなければ分からない罪をわざわざ自白することもないと、僕は胸の奥にしまう。
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