幼少~少年期

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先程ちょろっと顔出しに来たけど。 閑話休題。 僕たちが会場入りしてから一時間。ようやくパーティーが始まるようだった。最初に主賓である母さんの挨拶。クリスの挨拶がそれに続いて、乾杯である。 「乾杯」「乾杯」「乾杯ですわ」「乾杯」「乾杯!」 僕たちもグラスに飲み物を注いでチンと軽く音を鳴らす。さすがにお酒は飲めないので、シャンメリーのようなジュースで乾杯だ。 「ご機嫌麗しゅう、皆様」 皆で談笑していると、クリスが声をかけてきた。 「あ、クリスちゃん。俺と付き合――」 「私、お兄様一筋ですので」 あえなく撃沈。哀れマルコ。そう、最近のクリスはどうやら所謂ブラコンを拗らせたらしく、他の男の子にまるで興味を持たないのである。 空気を読んで愛嬌を振りまくこともあるらしいが、その必要がない場合には全て塩対応で済ませているとのこと。兄は少し心配だよ。 この子のげに恐ろしいところはよくキレる頭である。知識を片っ端から詰め込んではやたらと知恵を回すのが得意なのだ。前に「お兄様を家から追い出して戸籍を抹消してしまえば、悲願であったお兄様との結婚が叶うのでは」などと口走っていた時はこいつマジかと思ったものである。 「ところでお兄様は、この方々の中でしたらどなたが一番お好きですの?」 もう一度言おう。クリスは非常に頭の良い子である。そんな子が落とした爆弾が単なる誤爆であるはずがなく。 クリスがそう言った瞬間、ペトラ、レオノーラ、ヘイディの目がギラつくのが分かった。これはアレだ「私を選んでくれるよね?ねえ?」という視線だ。ちょ、ペトラまで。 どうしたものかと頭を抱えていると、クリスはクスクス笑いながらチラチラと視線を合わせてくる……そういうことか。もう本当に質が悪いなあ。 「……クリスが一番かな。妹ってやっぱり可愛いし」 そう、この場を穏便に済ませるためにはこう言うしかないのだ。それを分かってやっているのだからクリスは本当に質が悪い。 「まあ!お兄様と私は相思相愛ですのね!私、嬉しさのあまり天国に昇ってしまいそうです!あ、挙式はいつになさいます?」 驚いてた仕草を見せてはいるけど、ほとんど言わせたようなものじゃないか。とは、言えないよなあ。 可愛いのだが――というか見た目の可憐さという意味では今までに見てきた女の子の中でもトップクラスに可愛いのだが、極度のブラコンが玉に瑕どころか亀裂である。
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