学園編

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「どうも、レオンハルト・ルーデンドルフと言い――」 「あ、君には聞いてないから」 と遮られてしまった。しょぼんぬ。こやつはアレか、会話が一方的なタイプのコミュ障か。隣でカレンが静かに激怒しているのを見て、ああ地雷踏んだなあとか他人事のように考える。 「ねえカレンちゃん。せっかくここで会ったんだから、一緒に遊ばない?」 「ご遠慮させていただきます」 取りつく島もなかった。というか仲良くしてるんじゃなかったのかっていうくらいに雰囲気が剣呑だった。 「私は今、ご主人様とデート中なので」 だから邪魔すんなと、そう言い切った。そりゃまあ僕からしたら無粋だし、カレンとしてもまあ、そういうことなんだろう。 「デート中なので」 二度言った。よほど大事なことらしい。この娘はいつもそうだ、最初は遠慮するくせに最後は絶対遠慮しない。どうやらカレンにとり、ここはどうしても譲れ得ぬところであるようだった。 「……ご主人様とやら、カレンちゃんを解放してあげる気はないのか?」 わあい僕にも話しかけてくれたぞ。ただし内容が内容だが。別に僕はカレンを縛り付けてるつもりはないぞ。デートに行こうと提案したのは僕だけど。 「僕としてはカレンの意思を尊重するつもりだけど?」 「私はご主人様とデートがしたいです」 即答だった。僕がそう言った瞬間、間髪入れずに意思表示をした。うん、別にぎゅって抱き着く必要はないと思うけどまあいいやなんかちょっと柔らかいところが当たってて役得だし。服の上からじゃ分からないけど、やっぱりあるんだなあ、しみじみ。 「……ああそうかい。んだよ、ギャルゲーのヒロインかと思ったのによ」 なんて、ぼそっと悪態を吐く男。それが普通の負け惜しみなら、僕もカレンも気に留なかっただろう。だけど、確かに呟いたその言葉は。 ――僕以外にも、地球から来た人がいる? 今まで考えてこなかった可能性を、如実に示唆していた。 そうして三人と別れてからしばらく、僕は考え込んでしまっていた。 「ご主人様?」 不安そうな表情で、カレンがそう訊ねてくる。おっといけない、今はカレンとのデート中なのだ。他のことを考えるなんて以ての外だろう。 「ああ、ごめんごめん。もうそろそろ昼になるけど、昼食でも摂ろうか」 「あ、あの!それでしたら実は……」 と言うカレンに連れてこられたのは、カップルご用達のオシャレなレストランだった。
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