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魔法だって、簡単なものはほとんど覚えてしまった。とはいえ、あの一冊の入門書に書かれているもののみであるから、まだ他にも易しい魔法が存在するのかもしれないけど。
さてそんな折だった。使用人さんの話を聞くところによると、どうやら僕の父さんが帰ってくるらしい。手紙が来た、ということなのでもうあと数日もしないうちに帰ってこられるだろう。三年にしてやっとお目見えである。
「パパ?」
「そう、パパよ」
僕は今現在、母さんの膝の上で親子のスキンシップを強要(僕主観)されていた。母さんに背を預けるようにして座り、背後から抱きつかれる体勢である。あの、胸が当たってるんですけど……。まあ子供だし気にしていないだけなのかもしれない。
「どう?ママのおっぱい柔らかいでしょ?」
そんなことなかった。明らかに狙ってやっていた。確かに母さんの言う通り、凄く柔らかいし、ぶっちゃけ極上の感触だとは思う。うん。思うけど。
「柔らかいけど……ちょっと過激だと思う」
もちろん、親子のスキンシップにしては、ではあるが。というか息子に向かって自分の胸の感触を聞くなんて、どういう神経しているんだろう。
「もう、つれないわね」
つれないとかの問題ではないかと思うのだけれど。あまりすげなくあしらっても拗ねてしまうのが目に見えているので、適当にされるがままになっておくしかない。案山子だ、案山子になりきれば胸の感触だって気にならな――
ふにょん。
――無理である。気にするなという方がどうかしてるし、それは男として機能不全に陥っているのではないかとすら心配する。まあ今の僕は三歳児なわけだけど。
「ま、マリア……?後で貴女にも堪能させてあげるからそんなに睨まないでちょうだい」
ああ見えて、と言うのか嫉妬深いマリアさんは母さんの地位と権威に臆することなく僕の所有権を主張し始める。もはや何も言うまい。
まあ、マリアさんに関しては一発で骨抜きにする裏技が存在するので後でしてあげようと思う。使うと半日ほどマリアさんが機能しなくなる諸刃の剣だけど。
さて二日後。
「奥様。旦那様がお戻りになられました」
執事さんの一人が、そう報告した。
「そうですか。レオ、行きましょう」
いよいよ父さんとご対面である。母さんに連れられて玄関まで行けば、ちょうど見たことのない男の人がドアを開けて中に入るところだった。この人が僕の父さんなのだろうか。
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