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自撮りをSNSにアップするような、というよりは黙々とノートパソコンでレポートを書いていそうなタイプの方かな。あるいは文庫本を持たせたいですね。完全に僕の趣味嗜好だけれども。
と、こんなノリで三着、四着と試着していく。割とどんな服でも似合ってしまうのが逆に困る。これだ、という物を一つに絞ることは容易でない。それもこれもカレンが可愛いからいけないのである。
「いっそ全部買うか?」
「これがいいです!」
僕が頭の中で勘定を始めた瞬間、カレンはさせまいとばかりに声を上げる。彼女が選んだのは最初に試着した白のワンピース。
チラッとカレンを見る……確固たる意志を感じた。いやそんなにたくさん買わせたくないんか。
「ごしゅ、レオンさんに任せると、どれこれ構わず買ってしまいますからね」
別にええやん。お金はあるぞい。全部カレンに着てもらうのだから無駄遣いになるということもあるまいよ。
「どうしてこうもレオンさんは私達に甘いのでしょうか……」
何故か嘆かわしいことのように言われてしまった。甘いというつもりはなかったのだが、そのように捉えられているらしい。もしかしたらマリアさんもそう思っているのかも。
「自分に仕えてる人を労うというのは、そんなに不自然かなあ」
と買い物を済ませながら呟く。向こうの世界でもブラック企業なんて単語が流行ったが、あんな人を使い潰すようなやり方はいたく短絡的だ。人は城、人は石垣、人は掘以下略なんて五七五七七の歌が残っているくらいだから、人というのはそれだけで資本なのである。
そんな資本たる人をぞんざいに扱って、どうして成り行くことができるだろうか。というか人が人を道具みたいに扱うなと言いたい。
「その労い方が度を超えていると言っているのです。これでは私達がダメになってしまいます」
ダメになったカレンも見てみたくはあるんだけど、見る機会なんてきっと訪れないんだろうなあ。
なんて他愛ない話をしていると。
「あれ、カレンちゃん?」
と、誰かの声がした。
「カレン、友達?」
「はい、仲良くさせていただいています」
男子一人に女子二人の三人組。どうやら全員同じクラスのようだった。両手に花とか羨ましい限りだよまったく。
「カレンちゃん、隣の人が……前に言ってたご主人様?」
「そうですよ。この方が私のご主人様です」
ご紹介に預かったので一応名乗っておこうか。
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