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「そう言うお母さんはどうなの?もう結婚しないの?」
まあ、前例が前例だけに、躊躇う気持ちは分からないでもないけど、悪い人ばかりじゃないと思う。
「結婚は、もういいかな」
だけど母さんはそう言った。嘘をついているようにも、本心を隠しているようにも見えなくて。
「結婚は……?」
「――っ!?……他意はないわよ」
そう言ったきり、黙ってしまった。仕方ない。僕も休憩を、すると……しよう……。
――。
「レオ、もうすぐ着くわよ」
声を掛けられ、ハッと起き上がる。そこにいたのは、クリスを抱いた母さんだった。ちなみにマリアさんはまだお寝んねである。
「マリアさん、起きて」
「――んあ、レオ……様?れ、れれ、レオ様ああああっ!?」
狭い馬車内でガバッと勢い良く起き上がる。器用な真似をするなあ。
「ももも申し訳ございません!仕える主に対して何ということを!マリア一生の不覚にございます……」
「別に気にしてないからいいよ。マリアさんの寝顔も堪能できたし」
「レオ様の膝枕を堪能することなく寝てしまうなんて……」
「そっちかよ」
ツッコまずにはいられなかった。忠義に厚いのはいいけどこれは違う気がする。移動時間が移動時間なため、今日は王都で一泊だ。チェックイン、チェックアウト時間の概念もないので、とりあえず先に宿へと向かう。
別荘はない。地価が高い王都に建てるなんて、お金持ちのすることである。ウチは伯爵位だけどそこまでお金持ちってわけでもないし。納める税金だって洒落にならない。
その代わりに、貴族御用達の宿を使わせてもらうのだ。多少煌びやかで目がチカチカするけど、我慢できないほどじゃない。前世でド貧乏だった僕としては趣味悪いなあとは思ってしまうが。
その宿の一室を借り、荷物を置いておく。僕、クリス、母さん、マリアさんの四人なら、わざわざ別室にする必要もない。
「私はクリスを見てるから、レオ、行ってらっしゃい。マリア、レオをよろしくね」
「はい、イーラ様。とは言っても、どちらかと言うと私が守ってもらう立場になってしまいそうですが……」
僕個人の戦闘力のことを指しているのだろう。まあ致し方ない。マリアさんは非戦闘要員だし。
「マリアさんは僕が守るから」
「レオ様……きゅん」
自分できゅんとか言う人初めて見たぞ。そこまで分かりやすい反応を示されては、なんとか応えたい気持ちになってしまう。
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