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とまあ僕が良い塩梅に混乱しているうちに、背中のファスナーを下げて胸元を緩め、器用に胸をポロンと露わにさせた。あ、大きい。柔らかそうだなあ。
マリアさんは女体の神秘に感動している僕を抱っこすると、己のお胸様を僕の口元へ当てがった。
「レオ様、おっぱいですよ」
控えめに言って美少女であるところのマリアさんの口からそんなセリフが飛び出てくるのだ。萌えないはずがない。
だがそれでもどうしたものかと思ってしまう。果たしてこれを咥えていいのだろうかと。尋常ならざる背徳感が僕を襲う。いや、今の僕は赤ちゃんなんだ。中身は十八歳じゃん。天使と悪魔が、脳内で思考の争奪戦を繰り広げる。
勝ったのは第三者。「空腹には勝てなかったよ」そう、生存欲求である。マズロー先生がお茶目に笑った気がした。「人間だもの」それは違う人だよマズロー先生。
ぷっくりとした突起を、躊躇いがちに口へ含む。
「ぁんっ」
艶かしい声を上げないでいただきたい。食事に集中できない。ちうちうと吸う動作を繰り返していると、先端からちょろっと液体が出始めた。女体の神秘はまだまだ続きそうである。
「はあっ、はあっ、れ、レオ様ぁ……」
だから艶かしい声を上げないでいただきたい。こうなればもう無心で吸うしかない。無心、無心だ僕。
「そ、それにしても、魔法というのは便利ですね。こうして、妊娠を経験していない身でこうして授乳ができるのですから」
が、僕の意識は幸いにも別の方に向けられた。今、魔法と言ったか。 これはもしかしたらもしかするのかもしれない。
ここは地球ではない――ともすれば違う世界線の可能性だってある。魔法があるのだ、と。そのもしかしたらを考えるだけで随分と楽しい気分になる。ここは絵空事の世界。
早く、この世界を見てみたいなあ。
「レオ様?」
吸い付きが悪くなったのに気づいたマリアが、僕に声をかける。相変わらず自己主張の激しい胸は僕の眼前にあるわけだが、まあ興奮しても反応しない身体だからどうしようもない。いや、どうこうするつもりはないけれど。
「あー」
大丈夫だ、と返事をする。いい加減、こっちの方も不自由なく喋れるようになりたいものである。言語活動ができないのは何かと不便だ。
幸せな人生を送るためであれば、やることは山積みである。だけど――
まずは、手始めにこう言っておくことにしよう。
Hello, world!
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