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それからもう一人。
「おっす、久しぶりだな」
「久しぶり、マルコ。あまり乱暴な言葉遣いは控えた方がいいよ?ほら、ヘルミーナさんが睨んでる」
「げ、やっべ。怒られっかなあ」
「直す気ありませんのね」
この、若干粗野で貴族の跡取り息子っぽくないのはマルコ。赤く燃えるような髪が印象的だ。ぶっちゃけただのやんちゃ坊主である。
特に、辺境伯内の集まりやらがある時は、僕、ペトラ、レオノーラさん、ハイディさん、マルコの五人で固まっていることが多くなった。年が近いということもあって、自然とそうなったのだ。上から順に、レオノーラさんとハイディさん、マルコ、僕とペトラがそれぞれ十歳、九歳、八歳である。
「ペトラちゃんは今日も可愛いなあ、俺と付き合ってよ」
「ペトラちゃんは渡さないよ?」
着崩れしないように優しく抱く。
「れ、レオン君、恥ずかしいよ……」
「ペトラちゃんはこういうの、嫌い?」
「う……す、好きだけど……」
これである。ああもうペトラは可愛いなあ。あまり表に出さない乙女回路の持ち主だというのだから愛でずにはいられない。
「うがあっ!俺の前でイチャつかないでくれえ!」
「でしたらペトラさんにちょっかいかけなければいいですのに」
「自業自得」
女性陣からの扱いが酷い。同情だけはしてやるぞ、マルコ。
「ところでレオンハルト様。私は抱いてくださらないのかしら?」
「え?」
「私も」
「んん?」
あれ、それってこういう流れなの?マジで?まあ別に、抱き締めるくらいもう慣れたものだからいいけど。
「ちくしょう!何でレオンはモテるんだよ!」
マルコの悲痛な叫びを無視して、レオノーラさん、ハイディさんと順番に抱いていく。一、二分も抱き締めていれば満足気に離れてくれた。
「なあレオン。どうやったらモテるんだ?」
「どうやったらって特に何もしてないけど……」
「嘘つくなよ!何かあるだろ、こう、毎日してることとかさ!」
食いつくなあ。彼の気持ちも分からないではないが、助言できるようなことは何もないと思う。前世だってモテた経験は皆無だし、今回だって戸惑っているくらいなのだ。
「毎日かあ……あ、十キロのランニングと一時間の筋トレは欠かさないようにしてるけど」
「…………」
無言でへたり込むマルコは無視して、三人を連れて会場へ向かう。主賓である母さんとその娘であるクリスは準備で大忙しだろうな。
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