幼少~少年期

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領域全体に干渉するスタン魔法で、全員を一気に無力化する。魔法耐性があればレジストもできるだろうが、魔法使いは希少だ。おいそれと集められるまのではない。 この部屋全部を対象に設定してもよかったが、さすがに証言できる人がいなくなるし、身内を傷つけるのは忍びなかった。 「ご主人様、こちらは終わりました」 「お疲れ様」 言って、頭を撫でて労ってやる。凄くうっとりした表情を向けてくるので、手をするすると下ろして頬に添える。しばらくして、手を離した。 「さっさと拘束しようか」 「承知致しました」 どこからともなく取り出したロープで後ろ手に縛っていく。地下牢に放り込んでおけばいいだろう。 とんだ闖入者に邪魔をされたが、怪我人はゼロであり、事なきを得た感じである。 「大丈夫?ペトラちゃん」 「う、うん……カッコよかった」 そういう感想は求めていなかったのだが、そう言ってくれるのは素直に嬉しい。 「ありがと」 「ご無事で何よりです、お兄様。私、お兄様のご勇姿に惚れ直してしまいましたわ」 「公然と実の兄を口説きにかかるのはやめなさい」 我が妹ながらなんて奴だ。この状況でそんなことが言える神経の太さには感服するけど、TPOというものを弁えてほしいなあというのが兄としての本音である。僕のこととなるとどうしてこうも見境いなくなるのかなあ。 さて後日談のようなもの。 「まさかあの刺客たちが、辺境伯が仕向けた者だったなんてね」 黒装束の輩を引っ捕えて背後関係を明るみにしたら、出てきたのはとんでもなく大物だったのである。どうやら当代の辺境伯は俗物であったらしく、ルーデンドルフの力が伸びてきているのが気に食わなかったらしい。 だからといって短絡的に殺ってしまおうというのだからとんだ迷惑である。まあ、クリスと母さんを手にかけるなんて僕が許すはずもないのだけれど。 辺境伯、というのは伯の位でありながら実質的には侯爵位に相当し、場合によっては公爵(デューク)とさえ呼ばれることもある、大層立派な地位である。基本的には王家の息がかかっており、言ってしまえば地方の下請けみたいな貴族が、よもや独断で自分の領地の貴族を潰そうとしていたのだから、王家としては堪ったものではない。 その汚点を払拭するべく、一族は断絶。そして、事を収拾した――被害者でもある僕たちルーデンドルフ家に手当が与えられる運びとなった。
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