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興奮冷めやらぬ……というか隠すつもりはないようだが、その口調や所作から溢れ出る気品は間違いなく高貴なご身分のそれである。
しかしまあ随分とぐいぐい来る娘だなあ。
「そう、ですね。それでは私もカサンドラさん、と」
英雄様などと呼ばれては休まる気も休まらなくなってしまうので、それ以外の方向でお願いします。
「カサンドラで、呼び捨てで結構ですよ?貴方」
本当に、随分とぐいぐい来る娘だなあ。
「……分かったよ、カサンドラ。これでいい?」
「はい!これから末永く宜しくお願い致しますね」
「こちらこそ宜しく。そう言うカサンドラは丁寧語なんだね?」
「婉やかな妻たるには必然ですから」
さいですか。もうこの娘ちょー気が早い。最低でもあと七年はかかるよ?
聞けば今九歳で僕より一つ年上なのだとか。姉さん女房というやつである。良い響きだ……じゃなくて。
そんなわけできゃいきゃいと年相当にはしゃぐカサンドラ、突然過ぎて理解が追いついていない他二名というカオスな構図ができあがるのであった。僕は、まあ、このくらいの理不尽なら慣れたものである。大切なのは上から押し付けられた迷惑を早急に対処することだ。
「レオが王女様と結婚……?」
「お兄様が妻帯者に……?」
……なんかちょっと不安になる捉え方である。この場が落ち着くまでもう少しばかりかかりそうだった。
とはいえ、少しばかり突飛な展開であっただけで、貴族としてはなんら不思議ではない。それどころか茶飯事ですらあるので、次第に「まあそんなこともあるよね。まさかウチがそうなるとは思ってなかったけど」的な雰囲気になっていた。
「私があの土地を治めるのはいいのですが、さすがに手が足りません」
「そう言うと思って、一人有能なのを仕えさせようかと考えておる。給金はこちらから出すが、期限は一年……貴公が良い人材を発掘するまで、ということでどうじゃ?」
王様お墨付きなら問題はないか。この一年間は他のことに現を抜かしていられなさそうだ。ヘルガ姉にも断っておかなくちゃ。などと早速算用を立てるのであった。
「まだ成人していないので貴方の許に入ることはできませんが、たまには遊びにいらしてくださいね?」
「善処するよ」
男が口にする信用ならない言葉トップ三のうちの一つで返す辺り既にダメじゃねえかと自己分析する僕。なお、他の二つは行けたら行くと先っちょだけだからである。
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