幼少~少年期

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正確にはカレンもいるわけだけど、彼女は身の回りの世話がメインじゃないからなあ。 「いいんじゃないかしら。マリアはレオの専属侍女なのだから」 とはいえ、ルーデンドルフ家で働いている以上当主の言質は欲しいわけで。望んだものがすんなり手に入ってしまったのはまあご愛嬌か。 「それにしてもお兄様こそ、浮かない顔をされているようで」 自分が不景気な顔をしているのはどうやら自覚しているらしい。さすがに精神との折り合いをつけるのは上手いなと感心する。 「ぶっちゃけ面倒くさい」 「あの場でそんなことを仰らなくて本当に良かったですわ!」 「僕は空気が読める子だからね」 さっきも同じようなやり取りをしたなあ。面倒くさいものを面倒くさいと言って何がいけないのか。もちろんTPOは弁えた上で口にするけど。 「もう……大出世ですのに、どうしてお兄様はこうも欲がないのでしょうか……」 「僕は慎ましやかな生活が送れるならそれで充分満足なの」 「つまり私がお兄様を養うと?」 「それは勘弁願いたいね」 妹に養われる兄とか格好悪過ぎる。てかどうしたらそんな曲解のしかたになるんだ。 「私は最新鋭の妹脳を搭載していますから」 「どこに役立つのそれ!」 パソコンみたく言うなや、この世界にそんなものないだろ。前世では兄を慕ってくれる妹欲しいなあなんてないものねだりしたこともあったけど、なんかこれは違う気がする。 「え?お兄様のパーソナルデータを保存、更新したり、お兄様の御姿を余すところなく収めたり、お兄様の位置情報をリアルタイムで察知したりできますよ?」 「完全にストーカーじゃないか!」 「あんな変質者と一緒にしないでいただきたいです。これは私のお兄様への愛が成せる業なのですから」 「ストーカーは皆そう言うんだよ」 「お兄様、酷いです!」 だって行動原理がどう考えてもストーカーのそれである。果たしてこの娘は自覚がないのだろうか。いやでもクリスは頭良いしな……僕に関わると途端にアホっぽくなるけど。 まあそんなわけで、僕はどうやらそこそこ偉い貴族になってしまったらしい。うむ、面倒である。 「はあ!?レオンが辺境伯に!?」 「ちょ、ヘルガ姉、声大きいって」 というわけで早速ヘルガ姉に伝えに行った。親しい人という意味ではナタリーさん含む使用人さんもだが、そっちは母さんが伝えてくれるだろうし。
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