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僕が図らずも人生をやり直してから一年が経った。生後半年ほどで歩けるようになり、会話もできるようになった。元々成長した脳みそが入っているせいでもあるだろう。食事もすっかり固形食だ。ここまでくると謎の達成感がある。晴れておっぱい卒業だ。
こちらの世界でも、大体一人歩きができるようになるのは生後十二ヶ月前後らしく、初めて歩けた時はマリアさんが「さすがです、レオ様!」などと褒めそやしてくれた。母さんも凄く嬉しそうにしていたので、こういうのも悪くないかなと思ってしまった。
そうそう、自分の足で歩き始めて、人と話し始めて分かったことがいくつかある。まずはこの家――というか屋敷についてだ。三人で住むには些か大きいと思っていたこの屋敷には、僕と母さん、マリアさんの他に、使用人が何人かいる。メイドさんがマリアさんを含めて五人、執事さんが同じく五人。コックさんが二人に庭師さんが二人。名前と顔を覚えるのに一苦労した。
話を聞く限り、僕の家――ルーデンドルフ家は母系の貴族らしい。婿取りってやつだ。だけど父さんは見たことがない。そのことを母さんに言ったら「お父さんはお仕事で長いこと家を空けているのよ」と返ってきた。単身赴任的なものだろうか。近いうちに帰ってくるとは言っていたので気長に待とうと思う。
この家は代々受け継がれたもので、母さんで五代目となる。今時母系は珍しいみたいで、やはり貴族の当主は男性が多い。一回だけ社交パーティーに連れて行ってもらったが、ナイスミドルなおじ様ばかりだった。あまり内容は覚えていないけど、とにかく愛想良く頑張ったと思う。
それからこの世界のこと。この屋敷が建っているのは、ローエンハイム王国の西部に位置する辺境の貴族領で、比較的治安の良いところらしい。らしい、というのはまだ僕がその目で見たことがないからである。早く街を歩いてみたいのだが、危ないからと止められていた。
そしてこれが一番大事なのだが、この世界には魔法が存在する。しかも結構お手軽な感じで。現代で言う電気の役割のほとんどは魔法が担っていると言ってもいいかもしれない。他にも相手を攻撃するための魔法もたくさんあるそうだ。
これも危ないからと止められているので、魔法を使うのに必要な魔力の練成だけ繰り返し練習する。 身体の方も、柔軟とウォーキングは毎日欠かさずやるようにしていた。
できることが増えたのはいいのだが。
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