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さて次は庭に向かおうかな……と思っていたところに。
「あら、お坊ちゃま?」
マリアさんではない、別のメイドさんに見つかってしまった。名前はアーデルハイト。長いのでアーダさんって呼んでいる。おっとりした雰囲気の美女で、齢は二十と少し。以前はブラウンがかったふわふわの髪をシニヨンにしていたのだが、下ろした方が綺麗だと思ったのでそのままにしてもらっている。
その時に「あらあら綺麗だなんて。お坊ちゃまに口説かれてしまったわ」などと言われたのだが、正味一歳であるところの僕に口説くという思考は存在しないので是非とも安心してほしい。
「何をしていらして?」
「お庭に行こうかなって」
「それでしたら、私がお抱えしますわ」
言うが早いか、アーダさんは僕をひょいと抱えてしまう。そのふくよかな胸が押し付けられてむにゅっと変形した。
「ぼ、僕もう、歩けるよ?」
「それでも危ないですから」
あっはい。この人、何かにつけてスキンシップを取りたがる嫌いがある。美人にスキンシップを求められるのは嫌じゃないけれど、それは中身が十八歳だからであって見た目的には乳児でも通用するレベルだって分かってるかな。
「それでは行きましょうか」
アーダさんに抱えられたまま屋敷を出て、花々が綺麗に並んでいる庭へと向かう。 やはりと言うべきか身長の差もあって歩みが全然違う。僕が歩けば十五分かかるようなところでも彼女に抱かれてもらえば五分で着いた。
マリアさんは僕の専属として勤めてもらっているが、アーダさんはその限りではない。五人のうち、母さんの専属に一人、父さんの専属に一人、残り二人は主に屋敷の管理だ。そのうちの一人というのがこのアーダさんである。
おっとりゆるふわな性格に豊満な肢体、貴族の侍女を勤める器量持ちとくれば、男の引く手も数多というものだろうに、この人その手の話を蹴り続けているらしく、別の性癖を疑われているようだ。具体的には、日本の言葉で言うところのレズとショタコンである。
もし後者であれば僕の身が危ない。さすがに色々弁えているものがあるだろうから大丈夫だとは思うがそれでも心配である。スキンシップも過剰だし……大丈夫だよね?
試しに、彼女の頬にキスをしてみる。
「お、おおおお坊ちゃま!?」
「アーダしゃはちゅー、嫌い?」
「殿方との接吻は余り好みではありませんが、お坊ちゃまのものとなれば――ふひっ」
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