1話

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新しい風が吹く。 私の短くてふわふわの髪の毛が乱れ、草木を揺らす森の風の中で文章を書くのが私は大好きだ。 「何を書いてるの?」 「自分とは違う自分」 「それって?」 「今の私が持っていない自分を書いてるの」 青空に白く大きな雲がかかった。 彼はそのタイミングで私の前に立った。 グレーに近い緑の髪の色。 おなじ日本人とは思えなかった―――ガタッ 「...夢か...」 瞼を2、3回開け閉めして、携帯で曜日と時間を見る。 土曜日、AM10:31 むくりと身体を起こし、リビングに向かう。 テーブルには親が残したメモとその月のお小遣いが10000円置かれていた。 母親は海外に出張中。 父親はテレビに出て、お金を稼ぐ弁護士。 ふたりが一緒にいるときなんて、年に数回だ。
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