第3章 最初の小さな一歩

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 あっさりと兄を追い払ったエセリアだったが、侍女達が遠巻きに恐々と見守る中、ソファーに座りなおした彼女は、腕を組んで考え込んでしまった。 「自分で作れば良いとは言ったものの……、手始めに、何をどうすれば良いかしら?」  そして真剣に「う~ん」と唸りながら考えを巡らせていると、上の方から鈴を転がす様なと言う形容がぴったりの声が降って来た。 「エセリア、どうかしたの? 難しい顔で考え込んでいて」 「お姉様、どうかしたとは?」  咄嗟に顔を上げて言葉を返したエセリアだったが、五歳年上だと聞いたその少女の顔をしげしげと見上げて、心の中で感嘆の声を上げた。 (サラッサラのプラチナブロンドが今日も綺麗だし、深い翠の瞳も思わず覗き込みたくなっちゃうわ。いかんいかん、こんなオヤジっぽい感想を言っている場合じゃないわよ。でもこんな美少女が自分と血の繋がった姉だなんて、本当にびっくりだわ。両親といい兄貴と言い、家族の顔面偏差値が高過ぎね)  そんな事を考えているエセリアも、客観的に見れば姉のコーネリアと酷似した美少女の域に入るのだが、本人にその自覚は乏しかった。 「ナジェークから、あなたが何やら騒いでいるから、様子を見てきてくれと言われたのよ。あの子は、何か用事があるらしくて」  軽く首を傾げながらそんな事を言われた為、エセリアは素直に頭を下げた。 「うるさくしていましたか? 申し訳ありません」 「それは良いのだけれど…、どうかしたの? 具合でも悪いの?」 「具合は悪くありませんけど、退屈病という病です」 「退屈病……」  一瞬、何を言われたのか分からないという顔つきで、何度か瞬きしたコーネリアは、すぐにおかしそうに笑った。 「随分、可愛い病気ね。それなら私が、詩集を読んであげましょうか?」 「いえ、そうじゃなくて!」  そこで慌てて弁解しかけたエセリアだったが、ふとある事を思いついて口を閉ざした。そのまま無言になってしまった妹を不審に思ったコーネリアが、不思議そうに呼びかけてみる。 「エセリア?」  するとエセリアは据わった目つきで姉を見上げながら、常より低い声で確認を入れてきた。 「お姉様……。私最近、本と言えば、聖典か歴史書か詩集位の物しか世間に流通していないと言う事実に、深く深く絶望したのですけれど……」 「え? 絶望って……、どうしてそんなに」
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