4418人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女が目を開けた時、その視界に広がったのは、見慣れない装飾が施された湾曲した天井だった。
(あれ? ここってどこ?)
自分がベッドに寝ている事は感覚的に分かったものの、記憶にある自室の天井との明らかな差異に、彼女は寝たまま戸惑う。
(これってひょっとして、天蓋付きベッドって奴かしら? そんな面白すぎるクラスのホテルに、予約とか入れた記憶は無いんだけど……)
ごく偶に自分へのご褒美として、エステコース付きで高級ホテルを利用する事はあったものの、至近日時で予約を入れた記憶も無かった為に困惑していると、そんな彼女の思考を、驚愕の叫びが引き裂いた。
「まあ、エセリア様! 良かった! 意識が戻られていたんですね!?」
「え? 何?」
何やら少し離れた所で、女性が感極まった様に叫んだと思ったら、そのまま部屋を出て廊下を駆け出して行った。
「旦那様! 奥様! エセリアお嬢様が、目を覚まされました!!」
「あ、ちょっと! いたた……」
何事かと慌てて声のした方に身体を捻って起きようとしたものの、瞬時に身体のあちこちに生じた痛みに彼女は呻いたが、そこで初めて、自分の身体の異常に気が付いた。
「え? どこか怪我をしてるわけ? ……って、はぁ!?」
そして明らかになった自分の身体を眺めながら、彼女は苦労してベッドに上半身を起こした状態で、驚きの叫びを上げた。
「明らかに、手足が短い……。と言うか、はっきり言って幼児体型? どうして?」
記憶にある自分はれっきとした成人女性であり、その身体との決定的な違いに、理解が追い付かないまま彼女が固まっていると、先程誰かが出て行ったドアから、複数の男女が一塊になって突入して来た。
「エセリアぁぁっ!!」
「意識が戻ったのね! 良かった!」
「いっ、いたたたたたっ!!」
自分の視界に入って来た者全員が、結構笑えるコスプレ衣装だと認識した次の瞬間、その中でも自分とそう年の頃が変わらない様に見える一組の男女が駆け寄り、泣き叫びながらいきなり両脇から自分を力一杯抱き締めてきた為、彼女はたまらず悲鳴を上げた。すると年配の男性が、慌ててその二人を窘めながら引き剥がす。
「お二方とも、落ち着いて下さい! お嬢様は怪我人です! 手を離して下さい!」
(助かった……。殺されるかと思った)
最初のコメントを投稿しよう!