第1章 色々な意味での覚醒

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 半ば強引に引き剥がされた男女は、かなり不満そうにしていたものの、命の危機さえ感じていた彼女は心底安堵した。するとその男性が、重々しい口調で尋ねてくる。 「エセリア様、事故の事は覚えていらっしゃいますか?」  それを聞いた彼女は聞き慣れない名前と、やたら装飾過剰なコスプレ衣装を着込んだ周囲の人間を見回しながら、淡々と告げた。 「全然。と言うか、あなたは誰ですか?」 「私が、お分かりにならない?」  驚愕した相手に、彼女は一つ頷いて話を続ける。 「そもそも、私の名前はエセリアなんて名前ではありませんけど。そちらの、先程私を殺しかけた男女に関しても知りませんが」 「何だって!?」 「エセリア!?」  そこで悲痛な叫びを上げた男女を再び制し、取り敢えず部屋から丁重に追い出した彼は、彼女をベッドに横たえさせてから身体のあちこちを慎重に触りながら確認し、元通り毛布と布団を掛けてから、重々しく周囲の者に告げた。 「階段で足を踏み外して、頭を強く打った衝撃で、エセリア様の記憶に多少の混乱が見られますが、徐々に落ち着くでしょう。ご心配なさらないで下さい」 (大丈夫なの? だって、触診しかしてないわよね? あんたの手はゴッドハンドか!?)  前近代的で適当過ぎる診断に腹を立てたものの、直感的にここで喚いても状況は改善しないと悟った彼女は、ひょっとしてこれは夢で、また眠って目を覚ましたらいつもの日常に戻っているのではないかと淡い期待を抱きながら、そのまま再び眠りについた。  しかし一眠りして目を覚ましても、周囲の状況が全く変化していなかった為、彼女は本気で頭を抱えた。 (普通に職場から帰宅して、テレビを見ながらまったりしていた筈なのに、どうしてこんなわけの分からない事になっちゃったわけ? しかも身体は子供になってるし、意識だけ異世界に来ちゃったとか、転生して前世を思い出したとか?)  服装を初めとする生活様式が現代日本とかけ離れた状況である為に、彼女はかなり突拍子も無い可能性を導き出した。 (それにしても、なんだか聞き覚えがあるのよね。エセリア・ヴァン・シェーグレンって名前。どこでだったかしら?)  意識が戻って数日。
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