第19章 残念なご先祖様

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 コーネリアの誕生日祝賀パーティーから二十日程経過した頃、部屋でエセリアが寛いでいると、ナジェーク付きの侍女が部屋を訪れ、主が呼んでいるとの話を伝えてきた。その為、彼女は首を傾げながらも腰を上げた。 「お兄様? お呼びだと伺いましたが、お客様がいらしているのではなかったのですか?」  兄の侍女に先導されて応接室に入ったエセリアに、ナジェークがソファーに座ったまま、身体を捻って手招きする。 「ああ、エセリア。こちらに来てくれ。僕のお客を紹介するから」  そう言われて素直にソファーに歩み寄ったエセリアだったが、兄と向かい合わせに座っている子供を見て、密かに考え込んだ。 (あら? この人、どこかで見た覚えが……。この前のお姉様の誕生パーティーに来ていたとか?)  そんなエセリアの内心を読んだかの様に、ナジェークが座ったまま相手を紹介してくる。 「この前の姉上の誕生パーティーに顔を出してはいたけど、エセリアには紹介していなかったと思う。イズファイン・ヴァン・ティアドだ。私と同い年の、ティアド侯爵の嫡男だよ。彼とは以前から懇意にしていてね」 「初めまして、エセリア。君がパーティーに出る様になったのは今年からだから、この前のコーネリア嬢のパーティーで初めて顔を見たけど、彼女やナジェークと挨拶しているうちに、君に挨拶するのをすっかり失念してしまって。申し訳なかった」  相手も座ったままにこやかに声をかけて会釈してきた為、エセリアは慌てて一礼した。 「い、いえ! 私こそ、あの場で披露したカーシスやプテラ・ノ・ドンの説明や指導に夢中になっていて、招待客の皆様にろくにご挨拶できなかったので。イズファイン様、宜しくお願いします」 「こちらこそ宜しく」  互いに挨拶をしてから、ナジェークに促されて彼の隣に座ったエセリアだったが、内心では激しく動揺していた。 (げ!? 騎士団長の子息のイズファインまで、あのパーティーに居たの!? 全然、気が付かなかったわ! 確かに顔立ちがまだ幼い感じだけど、しっかりと分かるのに、迂闊すぎる!)  《クリスタル・ラビリンス》の攻略キャラの一人と、また遭遇してしまったエセリアは、必死に笑顔を取り繕っていたが、そんな妹の様子に気が付かないまま、ナジェークが本題に入った。 「それで今日、イズファインがここに来た理由だが、お前にカーシスの手ほどきをして欲しいそうだ」
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