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さすがに有力公爵家後継者の誕生日祝賀パーティーらしく、ナジェークのそれはコーネリアのそれより、招待客も規模も勝っていた。しかし多くの招待客を目の当たりにしても、微塵も緊張したり慌てたりする事無く、ナジェークは両親の挨拶に続いて、来訪者へ感謝の言葉を述べる。
「本日は、私の誕生日を祝う為にお集まり頂き、ありがとうございます。先月の姉の誕生日祝賀パーティーの時と同様、目新しい玩具を揃えておきましたので、宜しかったらお楽しみ下さい」
何故かそこでちらりと、斜め後方に佇んでいる妹に目をやってから、ナジェークは話を続けた。
「ええと、それから……。特に子供や若い女性の方に喜んで貰えそうな本を、何種類か会場内に用意させておきましたので、ご歓談の合間にでも読まれた方は、そちらの感想を聞かせて頂けたら幸いです。それでは皆様、どうぞごゆるりとお過ごし下さい」
ナジェークが笑顔で話を締めくくると、客達はざわめきながら移動を開始した。それを見てから、彼は妹を振り返って小声で尋ねる。
「エセリア、あれで良かったかい?」
その問いに、エセリアは満面の笑みで頷いた。
「ばっちりですわ、お兄様。ああ言っておけば、お兄様の婚約者の座を虎視眈々と狙っている肉食獣のお嬢様達は、感想を聞かれた時に気の利いた事を言わないと周りに後れを取ると思って、まず本の方に行きますもの」
「確かに纏わりつかれるのは、遅くなりそうだけどね……。それだけでも良いか」
少しでも自分にアピールしようと、娘と母親がタッグを組んで群がってくる様子に、これまで内心で辟易していたナジェークは、そう呟いて自分自身を納得させた。しかしエセリアは、ニヤリとほくそ笑みながら予言する。
「お兄様、甘いですわ。今日のパーティーでお兄様にまとわり付く方は、殆どいなくなりますわよ?」
「いや、さすがにそれは無いだろう」
断言してドヤ顔をしている妹に、ナジェークは呆れた目を向けた。するとここで二人の所に歩み寄って来た人物が、声をかけてくる。
「ナジェーク、誕生日おめでとう。エセリア嬢も、相変わらずお可愛らしいですね」
その声に振り向いた兄妹は、笑顔で挨拶を返した。
「ああ、イズファイン。来てくれてありがとう」
「まあ、イズファイン様、いらっしゃいませ」
そこでエセリアは、イズファインが同伴している人物を見上げながら考え込んだ。
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