第20章 予想外の効果

3/6
前へ
/1201ページ
次へ
(あら? この方は誰かしら? 十代前半にしか見えないからお父様の筈は無いし、お兄様? でもイズファイン様に、お兄様っていたかしら?)  そんな彼女の疑問をよそに、彼らは和やかに話し出した。 「それでこの前の手紙に書いた通り、今日は友人を紹介しようと思って、同行して貰ったんだ」 「そうなるとこちらが?」 「ああ、クリセード侯爵家の、ライエル・ヴァン・クリセード殿だ。ライエル殿。こちらがナジェークとエセリア嬢です」  するとエセリアがどんな人物なのかと悩んでいた相手が、神妙に謝罪の言葉を口にしてから頭を下げてくる。 「ナジェーク殿、エセリア嬢、初めまして。ライエル・ヴァン・クリセードです。お二人の事はイズファインから聞いています。先日は我が家の事でご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありませんでした」 「いえ、ライエル殿は直接ご迷惑をかけていませんよ。エセリア嬢に時間を取って貰った、こちらが迷惑をかけています」 「それもそうだな」  そして彼がイズファインと二人で、楽しげに「あははは」と笑い合っているのを見て、エセリアは目を丸くした。 (え? クリセード侯爵家って、イズファイン様のお家と仲が悪かった筈よね?)  目の前の状況が全く分からなかったエセリアは、率直に尋ねてみる事にした。  「あの……、お二人の家は仲違いしていたとお伺いしましたが、違いましたか?」  その問いに、逆にイズファイン達が驚いた表情になる。 「あれ? ナジェーク、彼女に説明していなかったのか?」 「ああ、エセリアの驚く顔が見たくてね」 「なんだ、そうだったのか。エセリア嬢、実は私の家と彼の家は、カーシスのおかげで和解できたんです」  苦笑まじりにイズファインからそう言われたエセリアは、あまりの急展開に驚いた。 「はぁ!? それは一体、どういう事ですの?」 「エセリア嬢の指導を受けて、かなり腕が上がったらしくてね。カーシスの再戦で、ライエル殿に圧勝できたんだ」 「まあ! それは良かっ……、あ、いえ、その……」  イズファインの健闘を讃えようと、声を上げかけたエセリアだったが、対戦相手が目の前にいる事を思い出し、慌てて口を閉ざした。それを見たライエルが、苦笑気味に宥める。
/1201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4405人が本棚に入れています
本棚に追加