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(あら? この方は誰かしら? 十代前半にしか見えないからお父様の筈は無いし、お兄様? でもイズファイン様に、お兄様っていたかしら?)
そんな彼女の疑問をよそに、彼らは和やかに話し出した。
「それでこの前の手紙に書いた通り、今日は友人を紹介しようと思って、同行して貰ったんだ」
「そうなるとこちらが?」
「ああ、クリセード侯爵家の、ライエル・ヴァン・クリセード殿だ。ライエル殿。こちらがナジェークとエセリア嬢です」
するとエセリアがどんな人物なのかと悩んでいた相手が、神妙に謝罪の言葉を口にしてから頭を下げてくる。
「ナジェーク殿、エセリア嬢、初めまして。ライエル・ヴァン・クリセードです。お二人の事はイズファインから聞いています。先日は我が家の事でご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありませんでした」
「いえ、ライエル殿は直接ご迷惑をかけていませんよ。エセリア嬢に時間を取って貰った、こちらが迷惑をかけています」
「それもそうだな」
そして彼がイズファインと二人で、楽しげに「あははは」と笑い合っているのを見て、エセリアは目を丸くした。
(え? クリセード侯爵家って、イズファイン様のお家と仲が悪かった筈よね?)
目の前の状況が全く分からなかったエセリアは、率直に尋ねてみる事にした。
「あの……、お二人の家は仲違いしていたとお伺いしましたが、違いましたか?」
その問いに、逆にイズファイン達が驚いた表情になる。
「あれ? ナジェーク、彼女に説明していなかったのか?」
「ああ、エセリアの驚く顔が見たくてね」
「なんだ、そうだったのか。エセリア嬢、実は私の家と彼の家は、カーシスのおかげで和解できたんです」
苦笑まじりにイズファインからそう言われたエセリアは、あまりの急展開に驚いた。
「はぁ!? それは一体、どういう事ですの?」
「エセリア嬢の指導を受けて、かなり腕が上がったらしくてね。カーシスの再戦で、ライエル殿に圧勝できたんだ」
「まあ! それは良かっ……、あ、いえ、その……」
イズファインの健闘を讃えようと、声を上げかけたエセリアだったが、対戦相手が目の前にいる事を思い出し、慌てて口を閉ざした。それを見たライエルが、苦笑気味に宥める。
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