第20章 予想外の効果

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「構いませんよ? 私が惨敗したのは本当の事ですから。ですがイズファインが短期間のうちにあれだけ強くなったのには、本当に驚きました。エセリア嬢の指導が、よほど適切だったのですね」 「恐縮です」  そう微笑まれて、エセリアも苦笑を返すしか無かったが、ここでイズファインが溜め息を一つ吐いてから、しみじみとした口調で言い出した。 「だが、勝てたのは良かったんだが、私の父が見苦しい位狂喜してね。『前回の勝利はまぐれだろう』とか『五歳も年下にここまで負けるとは、恥を知れ』とか、クリセード侯爵に言い放って」 「ご先祖様だけでは無くて、当代様も残念な方なのですね……」 「だからエセリア、もう少し考えてから、口に出してくれるかな!?」  思わず本音を漏らしたエセリアに、ナジェークが頭を抱えながら懇願する。それで笑いを誘われたらしいイズファインは、苦笑いで話を続けた。 「我が親ながら、それがあまりにも見苦しくて、つい言ってしまったんだよ。『今回の勝負は、公平な物とはいえません。私はこのカーシスを考案したエセリア嬢から、じっくり指導を受けた上で、これに挑みましたので』って」 「イズファイン様は正直過ぎる方ですね。黙っていれば分かりませんのに」  感心した様にエセリアが口にしたが、もうナジェークは諦めて何も言わなかった。するとライエルが深く頷きながら、彼女の意見に同意する。 「私も同じ事を思ってね。『それでも負けは負けだ。君が努力したのは、確かなのだからな。だが君の様な正直な人間と対戦できて嬉しいし、負けを素直にみとめられる』と言ったんだよ」 「ライエル様もさすがですわ。いがみ合うばかりのお父上様達とは違って、お二人の代になったら、両家の間で良い関係を保てそうですわね!」  エセリアが潔いライエルに対しての好感度を上げていると、彼はイスファインと顔を見合わせて笑った。 「実は、もうなっているんだ」 「はい?」 「私が『ライエル殿さえ良ければ、エセリア嬢にあなたを紹介するので、彼女の指導を受けた上で後日再戦をお願いしたいのですが』と提案したら、『なるほど、それなら条件は一緒だな』と笑って快諾して頂いたんだ」 「そこで息子同士が意気投合してしまったものだから、親達もそれ以上、険悪な顔ができなくてね。なし崩しに、普通の家同士の交流っぽくなってしまったよ」  その説明を聞いて、エセリアが微笑みながら頷く。
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