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「そういう事でしたか……。それではライエル様も、私の指導をご希望ですのね?」
「はい。我が家はこれまで、シェーグレン公爵家とは殆どお付き合いは無く、この機会に紹介して頂いてお近づきになれればとの、下心もございますが」
「まあ! ライエル様は本当に、馬鹿正直な方ですのね。確かにイズファイン様と、気が合いそうですわ!」
「だからエセリア! 兄としては、少し言葉を選んで喋って欲しいな!」
正直に思った事を口にするエセリアと苦労性のナジェークを見て、友人になったばかりの二人は、顔を見合わせて盛大に笑い出した。
(まさかカーシスを使った事で家同士の対立が解消できちゃうなんて、思ってもみなかったわ。とんだ副効用ね)
若干年齢が離れていても、隔意なく言葉を交わしている二人を見て、エセリアは心底感心した。そんな彼女に、ナジェークが声をかける。
「じゃあエセリア。僕は挨拶をしたり、親しい人達と話をしてくるから」
「はい、わたしは向こうで、また玩具の説明をしていますね」
そして兄達と別れたエセリアは、前回のパーティー同様紛れ込んで、玩具の使い方の説明を始めていたミランの下へと向かった。
「お疲れ様です、お兄様」
「ああ、エセリアもご苦労様」
無事パーティ-が終了し、全ての招待客を見送ってから、エセリアは兄に声をかけた。そして笑いながら確認を入れる。
「今日のパーティーでは、お兄様にすり寄るお嬢様達は、以前と比べると格段に少なかったでしょう?」
その問いに、ナジェークが真顔で頷く。
「ああ、気味が悪い位だったよ」
「もう皆さん夢中で、壁際に置いておいた本を貪り読んでおられましたわ。お母様に叱責されて、漸くお兄様に挨拶に出向いても、すぐに本のある所に戻っていましたし」
「……そうだね。今日は何だかあっさり引くなとは、思っていたんだ」
しつこく絡まれなかったのは良かったものの、今日の自分は本以下の存在だったのかと、ナジェークは微妙な心境になった。そして兄がそんな心境に陥っているなど夢にも思っていないエセリアが、上機嫌に話を続ける。
「ミランがその様子を見て、『帰り次第、ありったけ在庫を出さないと』と真顔で言っていたわ。あれほど『売れるんですか?』と懐疑的な顔をしていたのに。やっぱり乙女の萌えには、年齢や身分差は関係無いのよ! あれらを呼び水にして、きっとあちこちで新たな才能が花開くわ!」
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