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姉、兄の誕生日に引き続き、自分の誕生日にも新開発した玩具や新作の本を披露したエセリアは、その後もワーレス商会の顧問として利益を稼ぎ出しながら、日々充実した日々を過ごしていた。それは、見た目よりも精神年齢が高い事が功を奏しているのか、殆どの学習課程・教養科目で家庭教師からお墨付きを貰っている為、両親が多少の常識外れの行動も容認してくれた事が大きかった。
エセリアはそんな寛容な両親が大好きだったが、ある日家族全員が顔を揃えた夕食の席で唐突に言われた内容に、本気で首を傾げた。
「エセリア。再来週に王宮に出向いて、お姉様にご挨拶するからそのつもりでね? コーネリア、あなたの顔も見たがっていらっしゃるから、一緒に行きますよ?」
「はい、お母様」
コーネリアは素直に頷いたが、エセリアは何気なく尋ね返した。
「お母様、お姉様とは誰の事ですか?」
彼女がそう発言した途端、食堂内が一瞬静まり返り、次にミレディアとコーネリアの悲鳴じみた声が上がった。
「まあ! お姉様の事を忘れたの!? 本当に?」
「お母様と同じ、キャレイド公爵家出身の王妃様の事よ!?」
「あ、すみません! そう言えばそうでした!!」
指摘されて頭の隅から放置されていた記憶を引っ張り出し、エセリアは慌てて言い繕った。その様子を見ながら、ディグレスとナジェークが、微妙な顔を見合わせる。
「無理もないか。まだエセリアは王妃様には一度もお目にかかった事はないからな」
「確かに、血が繋がっていると言われても、実感がわかないかも。実際にお目にかかるまでは、僕もそうだったし」
「今まではあなたが小さかったから、身内だからと言えども失礼な事があってはと、控えていたの。もう七歳になったから、大丈夫かと思っていたのだけど……」
頬に手を当てて、心配そうに考え込んでしまったミレディアを見て、エセリアは力強く断言した。
「大丈夫です、お母様!」
「そう? それなら予定通り出向きましょうか」
「ところでお母様。何か王妃様にご用がおありなのですか?」
話に一区切り付いたと判断したコーネリアが、王宮に出向くそもそもの理由を尋ねると、ミレディアは困った顔になりながら口にした。
「そういう事では無いのだけれど……、お姉様は最近鬱屈される事が多いらしくて。『気晴らしをしたいから、子供達を連れて顔を見せに来なさい』と言われたの」
「『気晴らし』ですか?」
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