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そこで不思議そうな顔になった妹を見て、母の言わんとする内容をすぐに察したコーネリアは、穏やかに彼女を宥めた。
「エセリア。詳しい話は、食べ終わったらしてあげるわ」
「はい、お姉様。分かりました。後で説明をお願いします」
エセリアも姉の表情から、夕食の席で話す類の事では無いらしいと見当をつけて、大人しく引き下がった。
それからは普通に会話をしながら楽しく食べ進め、食後に子供達はコーネリアの部屋に集まった。
「それでお姉様。先程の王妃様のお話は、どういう事ですか?」
その問いに、コーネリアは一瞬迷う素振りを見せてから、慎重に話し出した。
「ええと……、王妃様はご結婚以来、一度もご出産されていない事は知っている?」
「なんとなく、聞いた覚えが有るような無いような……」
自信なさげに呟いたエセリアに、コーネリアは質問を続けた。
「それなら、王妃様の他に、陛下には側妃が三人いらっしゃる事は?」
その質問には、エセリアは妙にきっぱりと断言した。
「聞いていたら、『うちの国王はクズ野郎なのね』とか思っていそうなので、聞いていないと思います」
「エセリア、仮にも国王陛下だから。言動には本当に注意してくれ」
遠慮の無さ過ぎる発言に、ナジェークは本気で頭を抱えたが、姉妹の容赦ない会話は更に続いた。
「因みに陛下の側妃方が、既に王子殿下を二人、王女殿下を三人ご出産されている事は?」
「それは……、聞いていたとしても、だからどうしたと、聞き流していたと思います」
何とも言えない表情で応じたエセリアだったが、コーネリアはそんな彼女に淡々と告げた。
「それで、最近陛下が四人目の側妃を後宮に入れようと画策しているとか、その側妃が既に懐妊しているとかの噂は?」
「国王陛下って……、すっかり駄目親父ですね。この国の将来は、大丈夫なんでしょうか?」
「姉上……。僕もその噂は初耳です。どこからそんな話を……」
半眼になって国の将来を憂う妹と、唖然としている弟を眺めながら、コーネリアは真顔で確認を入れた。
「取り敢えず、公務をきちんとこなす傍ら、いがみ合う側妃を纏めて、女官達を取り仕切って王宮の仕事を回している、王妃様の気苦労の程が、少しは理解できたかしら?」 それにエセリアが、声を張り上げながら答える。
「はい! もう、涙無くしては語れませんね! 王妃様は偉いです!」
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