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「……それって、泣くほどの事か?」
妹が実際に涙目で叫んだ為、ナジェークが思わず懐疑的な表情で突っ込みを入れた。しかしすかさず、姉と妹から反論される。
「男は黙ってて」
「そうよ、ナジェーク。これは女性の機微に関する、繊細な話なのよ?」
「……失礼しました」
そこで反射的に謝ってしまったナジェークを放置して、女二人は真剣に語り合った。
「それで子供がいない王妃様は、時々自分の妹や弟達に声をかけて、子供達同伴で時々王宮に招待して下さるの。子供がいない分、甥や姪を可愛がって下さっているから」
「そうだったのね……。それならお姉様。日頃忙しく、お寂しい暮らしをなさっている王妃様を、その時に喜ばせたり楽しんで頂きたいわ!」
「そうね。特に今回は、エセリアが初めてお目にかかる機会だし。どんな事をすれば良いかしら?」
途端に難しい顔になったコーネリアだったが、すぐにエセリアが明るい表情になりながら告げた。
「お姉様、いい考えがあります! ちょうど昨日ミランが持って来た、試作品があるんです!」
「まあ、どんな物? 今までエセリアが考えたゲームの中から、何か持って行こうと考えていたけど、試作品ならまだ市場には出ていないし、ちょうど良いかもしれないわね」
コーネリアが頷いたのを見たエセリアは、壁際に控えていた自分付きの侍女を振り返って、早速指示を出した。
「それじゃあミスティ。急いで部屋に行って、机の上に置いてある箱を持って来て。お姉様に見て貰うから」
「少々、お待ち下さい」
一礼して部屋を出て行くミスティを見送ったコーネリアは、不思議そうに妹に声をかけた。
「エセリア、今度は何を考えたの?」
それにエセリアが、胸を張って断言する。
「うふふ、それは見てのお楽しみです! あれだったら大人の王妃様でも、必ずドキドキワクワクして貰えますわ!」
「そうなの? 凄いわね」
「何か……、妙に不安だ。王妃様にお目にかかるのに、本当に大丈夫なんだろうか?」
感心した様子でコーネリアが相槌を打ったが、その横でナジェークが不安に満ちた表情で呟いた。そして不幸な事に、彼のその不安は的中してしまうのだった。
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