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予定の時刻より少し前に子供達を引き連れて王宮に出向いたミレディアは、滞りなく奥へと通され、王妃の私室へと足を踏み入れた。
「お久しぶりです、お姉様」
礼儀を守って恭しく頭を下げたミレディアに、彼女の姉であるマグダレーナは、親しげに微笑みかける。
「本当ね、最近は色々と忙しない事ばかりで……。あなたの顔を見るのを、楽しみにしていたのよ? それに今日は、あなたの秘蔵っ子を紹介してくれるのでしょう?」
「まあ……、エセリアの事がどの様にお姉様の耳に伝わっていたのか、少し怖いですわ」
どこか茶化すものを含んだ姉の物言いに、ミレディア苦笑してから、自分の後方に横一列に並んでいた子供達を振り返って促した。
「皆、ご挨拶なさい」
それを受けて、まずコーネリアが一歩前に出て一礼する。
「王妃様、またお目にかかれて嬉しいです。以前頂いた教本に載っていたデザインで、ハンカチに刺繍をした物を持って来ました。宜しければお使い下さい」
「ありがとう、コーネリア」
そう言ってから歩み寄り、彼女から差し出された小さな包みを受け取ったマグダレーナは、早速中身を取り出して感嘆の声を上げた。
「まあ、素敵な刺繍だこと! 大事に使わせて貰うわね」
そこでコーネリア、笑って元の位置に戻ると、次にナジェークが口を開いた。
「お久しぶりです、王妃様。乗馬用の馬を贈って頂いて、ありがとうございました。まだ普通の馬だと大きいので、あの大きさの馬を頂けて助かりました」
「頑張って乗馬を練習して下さいね?」
「はい!」
そんな微笑ましいやり取りを聞きながら、エセリアは一人、緊張しまくっていた。
(さすがにお姉様もお兄様も、慣れている感じ。うぅ、緊張する。何か変な事を言ったらどうしよう)
するとナジェークの話に一区切りついても黙っているエセリアを不審に思ったのか、ミレディアが控え目に声をかけてきた。
「エセリア?」
「あ、は、はい!」
そして我に返ったエセリアは、慎重に一礼しながら自己紹介をした。
「王妃様には、初めてお目にかかります。エセリア・ヴァン・シェーグレンです。宜しくお願いします」
その緊張感溢れる、初々しい様子を見たマグダレーナは、思わず笑いを零した。
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