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「七夕祭り……」
初デート、本当は彼と行きたかった。
けれど、彼から誘われることもない。
私からもと考えたのだが、周りに冷やかされたり「友達と行きたいから」なんて断わられたらと思うと、休み時間、あの男子の群がる中へとてもじゃないけど誘いに行けない。
勇気がなくて電話も何も出来ない。
当日、様々な色の誰かの願いが夜空にくるくる舞う中、浴衣に合わせた髪型が崩れないよう風をやり過ごし前を向き、彼を見つけた。
私も彼も互いの友達グループと。
丁度、彼とのすれ違いざま。
私の冷えた指先に彼の指がゆるく絡まり、歩く速度が遅くなる。
「あとで」
瞬間、そう耳元で静かに低い声がした。
「えっ、あの……っ」
振り返ると彼はこちらを見向きもせずに、友達と歩いて去って行く。
数分も経たずに通知音が、携帯を見ると一件。
「今そこで立っている所に、待ち合わせ」
「ほんと、ずるい……」
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