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「ほら、先だって桜様が、『ホストクラブで小娘に馬鹿にされた。あの女に思い知らせてやる!』とお腹立ちになって、色々調べさせているのは知っているだろう?」
「小娘と言っても四十代ですがね……。全く、手の掛かるばあさんだな」
公社の前会長であり、自身の遠縁でもある老婦人の傍若無人ぶりに溜め息を吐いた小野塚だったが、吉川の話は予想外の方向に流れた。
「それで彼女の夫の会社も含めて、詳細まで調べて裏工作しているところだが、桜様のご意向としては、やはり現場となったホストクラブで、屈辱にまみれさせてやりたいらしい」
「何を張り合っているんだか……」
「それを耳に入れていた社長が、奴に『あるホストクラブに潜り込んで、必要な情報収集と裏工作ができたら、採用を考えてやっても良い』と仰ったそうだ」
それを聞いた小野塚は、本気で驚愕した。
「はい!? 本当にあいつに、ホストクラブで働けと言ったんですか!? それできちんと活動できたら、本当に信用調査部門で採用するんですか?」
しかし吉川は、その問いかけに対して、否定の言葉を返した。
「……いや、社長は『採用を考えると言っただけだ。誰も採用してやるとは言っていない。だが俺も鬼では無いから何かあった時の為に、活動期間中の保険加入位は面倒をみてやるし、バイト料位は払ってやる』と仰っていた」
それを聞いた小野塚は、公社トップの容赦の無さに本気で呆れた。
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