第23章 桜査警公社は、今日も平常運転

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 その日、防犯警備部門の一角では、特務一課内でも阿南班と篠田班に所属している女性社員が集まり、世間話で盛り上がっていた。 「ねえ、そう言えば今度の仕事って、菅沼さんが昔カモられた奴から、巻き上げ返した事が発端なんでしょう?」  全く悪気が無さそうに、その場での最年長の先輩からそんな事を言われた真紀は、深々と溜め息を吐いてから訂正を入れた。 「小倉さん……。今の発言には、少々事実誤認があります。奴から直接ではありませんし、別に好き好んで大金を巻き上げたわけでもありません。寧ろ、押し付けられたと言った方が正しいかと」 「まあまあ、そんな些細な事はどうだって良いじゃない。結果として、こんな景気の良い話に繋がったんだから」  最初にこの件に絡んでいた裕美が笑いながら宥めると、彼女と同じ篠田班に所属している長谷川紀香が、興味津々で尋ねてくる。 「そう言えば、その元ホストの元代議士秘書さんは、その後どうなったの?」  その問いに、すかさず周囲から合いの手が入る。 「そうそう、私もそれが聞きたかったのよ! だって菅沼さんに会う為に、わざわざここまで出向いて来たんでしょう?」 「しかも本人の目の前で、美樹様にボロボロにされるなんて、何て不憫!」 「思わず『何年も、自分の事をこんなに好きでいてくれたなんて、真紀感激!』とか、うっかりほだされたりとか無かったわけ?」  もう完全に面白がっているとしか思えない言動に、無表情になった真紀が低い声で恫喝した。 「皆さん、全員纏めて絞めても良いですか?」 「……すみません」 「調子に乗りました」  さすがに彼女の本気の怒りが分からない面々では無く、全員神妙な顔で口を噤んだ。すると長谷川が、さり気なく話題を変える。
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