夜の豚にご用心

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 子豚だ、子豚の集団が森を駆け巡っている。木々の間から差し込む月明かりが駆け巡る子豚を幻想的な絵の中のひとつに変えてくれている。不思議だと思ったのは一瞬のこと。冷静に考えると笑ってしまうくらいおかしな光景だ。  飛び跳ねている子豚。木にしがみ付いて登ろうとする子豚。足が縺(もつ)れてひっくり返っている子豚。横倒しになって丸太のように転がる子豚。木にぶつかりふらついている子豚。軽快なステップで走り抜ける子豚。  まったく何をしているんだか。  子豚の集団が駆け回っているせいなのか腐葉土の匂いが立ち込めている。嫌な匂いではない。どちらかというと好きな匂いだ。自然を感じられるから。けど、もう十分だ。木々のざわめきも聞き飽きた。天に開けた空の星たちを眺めることにも飽きた。  何時間ここにいればいいのやら。 「唯(ゆい)、はしゃぎ過ぎだぞ。いい加減もう帰ろう」 「弥狛(やこま)、うるさい。私は思いっきり走らないと気が済まないの。帰りたきゃ、一人で帰りなよ」  罵声とともに近づいてきたかと思うと風を切って通り過ぎていく由奈和唯(ゆなわゆい)。
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