謝罪2

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しかし、風呂に入っている間にテレビが勝手についていたり、背後をだれかが歩く気配がする。眠っていると誰かに顔を覗かれているような気までしだした。ある日などはビールを飲んでいると微かに開いた物置きにしている隣室から、誰かが覗いていたように、扉が少し開いていた。 これはもしかしたら噂の事故物件て奴だろうか。この部屋で事故、自殺、あるいは殺人でもあったのか。 そう考えると嫌な気になるし、怖くもあった。しかし、人間は慣れる生き物でもある。どうやら実害が無い、となると僕は無害な同居人がいることを認めてしまったのだった。 さて、そうなると気になるのが幽霊の性別だった。一度、幽霊の影?を見たのだが髪の長い細身のシルエットだった。もしかしたら女の子なのだろうか。 そう考えると何故だか嬉しくなり、顔や名前を知りたくなってきた。 え?モテなさすぎておかしくなった?確かにモテない青春を過ごしたのは否定しないが、実害が無いなら幽霊に興味もわこうというものではないか。 不動産屋に聞いたところで誤魔化すだろうし、わざわざ調べるのも億劫だ。 だから僕は率直に聞いてみたのだ。 貴方の名前はなんて言うんですか?てね。 返事は無く、静寂が続いた。僕は諦めようかと思ったが、壁につけていたホワイトボードに見覚えの無い文字が書かれていた。 ナオミ、と。 それから僕たちの奇妙な同居生活が始まった。
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