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しかし、風呂に入っている間にテレビが勝手についていたり、背後をだれかが歩く気配がする。眠っていると誰かに顔を覗かれているような気までしだした。ある日などはビールを飲んでいると微かに開いた物置きにしている隣室から、誰かが覗いていたように、扉が少し開いていた。
これはもしかしたら噂の事故物件て奴だろうか。この部屋で事故、自殺、あるいは殺人でもあったのか。
そう考えると嫌な気になるし、怖くもあった。しかし、人間は慣れる生き物でもある。どうやら実害が無い、となると僕は無害な同居人がいることを認めてしまったのだった。
さて、そうなると気になるのが幽霊の性別だった。一度、幽霊の影?を見たのだが髪の長い細身のシルエットだった。もしかしたら女の子なのだろうか。
そう考えると何故だか嬉しくなり、顔や名前を知りたくなってきた。
え?モテなさすぎておかしくなった?確かにモテない青春を過ごしたのは否定しないが、実害が無いなら幽霊に興味もわこうというものではないか。
不動産屋に聞いたところで誤魔化すだろうし、わざわざ調べるのも億劫だ。
だから僕は率直に聞いてみたのだ。
貴方の名前はなんて言うんですか?てね。
返事は無く、静寂が続いた。僕は諦めようかと思ったが、壁につけていたホワイトボードに見覚えの無い文字が書かれていた。
ナオミ、と。
それから僕たちの奇妙な同居生活が始まった。
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