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俺の手に収まった自分の手を見ながら、彼女は小さな声で言った。
「・・・ガサガサで、みっともないでしょう」
「いいやー。働き者の手、でしょ?」
包んだ手は、少し節ばった指に、短い爪。掌も硬い。
自分の知っている、暖かみのある手。
ふいに、昔付き合っていた女の子の手を思い出した。
・・・こっちのほうが、俺は好きだけどなあ。
「キレーだよ」
手の中のそれを持ち上げ、甲に口付けを落とした。
パッと引かれた手を追って視線を上げれば、目の前には赤い顔。
笑うと怒るから、我慢したけど。
やっぱりちょっと、笑ってしまった。
「綺麗な手」‐終‐
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