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戻ってきた芝田君から釣りを受け取って、ガソリンスタンドを出た。
帰りに通る登り坂は、いつもより強く、アクセルを踏んでいた。
あらやだ80キロ?
速度オーバーのメーターは、見なかった事にした、真夏日。
***
「こんにちは!」
「こんにちは。お世話になります。レギュラー満タンでお願いします」
窓を開けたら、涼しくなった夕風が頬を撫でた。
「今日、芝田くん休みなんだよねー。せっかく来てくれたのに、ごめんね?」
「あ、いえ。今日休みって、知ってましたから」
「そっかー。結婚式に行ってるらしぃねえ」
「九州でしたよね?」
「いいなぁ。俺も旅に行きてぇー」
小銭入れに指を突っ込んで小銭を集めてる間も、上司さんはニコニコと話しかけてくる。
「はい!ちょうどいただきます。こちらがレシートです」
薄い紙を受け取って、エンジンをかけた。
窓を閉めようとボタンに手をかけた所で、上司さんはニコニコとまた、問うてきた。
「芝田君、良い子だよね!彼氏にどうかな?」
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