ゆらぎ

4/5
前へ
/5ページ
次へ
坂道を転がるように、病んでいった。 誰よりも気付いて欲しかった彼は、ソバにいなかった。 「あなたとは、もう、一緒には、居られないんだ」 一言ずつ区切るように、自分に言い聞かせるように言った。 もう、全てが手遅れで。 一緒にいてもたぶん私は満たされないし、あなたを幸せにもできないのだと。 私達では誰も幸せになれないのだと。 彼に、告げた。 食事もせず、ただ暗闇の中二人で一時間以上話して、別れた。 ようやく、別れられたと小さく息を吐いた。 ポツリ、ポツリと肌に感じた涙は、あっという間に降り出した雨に流されて行った。 ちんたらと歩く私の真横を、駆け足で追い抜いていく人々。 彼らの背中を見送った後。 取り残された道で、一人、笑った。 笑って、笑って、泣いた。 .
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加