大怪獣観戦

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「……ほぉ」 僅かに目を細めるグロム。 朗らかで明るい空気は一瞬で霧散し、明らかに警戒を込めた眼差しを向けてきているのが分かる。 だが、同時にラストは見逃さない。自分を見下ろすこの男が、警戒と共に抱いた好奇心を。 何故、自分の弱みである筈の魂胆を――手の内を晒すのか、グロムは心のどこかで知りたがっている。 「そんなに怖い顔するなよ。ここでやりあって、俺が怪我でもしたら……クレア・フォーリスが恥かくんじゃねえのか?」 「確かに。クレアはそんなこと、望まないだろうな……だけど、聞き逃せないことを聞いちまったから、一応の確認は取りたいものだろ?」 「お前がどこの誰かも知らないのに、何で教えてやらなきゃならないんだよ」 ――追え。 ――追って来い。俺から全てを聞き出そうとしろ。 ――お前が俺を一知る時には、俺はクレアという男を十知る。 心中で唱えながら、グロムを嘲笑うようにして挑発するラスト。 だが、グロムがその言葉に対して浮かべたのは、怒りではなく笑みだった。 「結構な物言いだな、ハハ! こりゃあ、クレアが気に入るのも無理はないか!」 「……よくアイツのことを知ってるようだが、お前は何者だよ。アイツの同輩か?」 「まぁな。でも、俺はお前のことはよく知ってるぜ? この前、ビルに叩き付けられた事とかな!」 「……あ?」 何故それを――それを知る人間は限られている。 例えばそれは『遺伝子』。しかし、このグロムなる男は――『遺伝子』よりも背丈は大きい。 身体的な特徴が合致しない。 ならば、スタージャでも『遺伝子』と対等に話せる間柄にある人間なのか。 いや、違う――筈だ。グロムと名乗ったこの男からは、『遺伝子』から感じる圧倒的な強者なる格が存在しない。 ラストの脳内で、目の前の男が何者であるのかというピースが錯綜していく。 間違っても、見覚えがない――しかし、その答えはグロムの口からあっさりと告げられた。 「あのビルの所有者、俺だからな! ま、すぐにレンが来たし、今の調子とか見てれば大丈夫らしいから……安心したぜ!」
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