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ランド 闘技場 観客席
見渡す限りが人間であり、見つめる先には円形の巨大な闘技場。
周囲の熱は新たな熱を呼び、歓声は下手をすれば鼓膜を破りかねない程だが――誰もが次の仕合を待ちわび、己を昂ぶらせていた。
あまりにも急に決まったと――少なくとも、ランドの生徒達にはそう知らされた、この大会とも呼べる模擬戦。
普段から積むべく鍛錬を積んでいない生徒は絶望し、反対に進むべき道を見据えた生徒は、自身を売り込むために切磋琢磨したこの模擬戦も、次の仕合が最後となっていた。
だが、及ばずに連敗を喫した生徒も、連勝を重ねた生徒も――今、この時ばかりは心を通わせて闘技場へと視線を向けている。
ランド最強と名高いあのクレア・フォーリスと、彗星の如く現れた天才ラスト・アバズール。
この二人の戦いは、まさに本日の大会の最後を締めくくるに相応しいだろう。
ランドの全ての生徒を収容しても余りきる空間は、今や外部から来た人間たちも相まって、そのほとんどが埋め尽くされていた。
そんな中――とある一角で、二人が戦うであろう闘技場を見つめる少女が一人。
サーミャ・ラーン。彼女はどこかつまらなそうにしながらも、最も良い位置――即ち、最前席に座っていた。
とはいえ、何もサーミャが自らこの席を選んだ訳ではない。
これは、ランドの特待生として与えられた特権の一つに過ぎないのだから。
それでもサーミャとて、クレアとラストの戦いを見たくないかと問われれば、間違いなく首を横に振るだろう。
クレアの剣は、サーミャも息を呑むほどの美しさがある。ラストの召還魔法も、一見の価値があるのは間違いない。
サーミャが寂寞を表情に浮かべているのは、もっと別の理由がある。
ここ最近――レンと全く連絡が取れていないのだ。少女の中では、結末が決まりきった戦いの行方よりも、レンの安否の方が遥かに重要だった。
――レン……。
思い描くのは、最愛の人間の顔。
突然いなくなった彼の安否を知るために、四方八方と手を尽くしたが、明確な答えは未だに持ちえていない。
恐らく、レン自身が証拠を滅却していたのだろう。
そうでなければ、フォーリス家の人間が「お答えできない」などという言葉で、自分を突っぱねる筈がないのだ。
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