大怪獣観戦

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「僕は」 未だ警戒を怠らないサーミャに、ゲートは俯きながら言葉を紡ぐ。 「サーミャ……君に救われたんだろう?」 「……!」 「君からすれば、僕は憎い敵……両親を殺した悪魔だった筈だ。だけど、君はそんな僕を救った……そんな人間を、僕が殺す筈がない」 両者の合間に沈黙が流れていく。周囲の生徒達の熱気や歓声が、どこか遠くに聞こえるほど――ゲートの言葉はサーミャの心に沈んでいった。 「今日まで……君と顔を合わせなかったのは……合わせられなかったのは……分かるだろう? 合わせる顔がなかったからだ」 「……だったら、何で……?」 自分の視界がぼやけていく。これが涙だとは認めたくはなかったが、サーミャは喉の奥から湧く嗚咽に耐えながら、そう呟いた。 呟く事しか――出来なかった。 「レンに……今の命に、ロゼと一緒にいれることを幸せと思うなら、サーミャに会いに行け……と」 「レ、ン……」 「許してもらうつもりはないし、君に謝る気はない。ただ、感謝だけはしている……それだけは伝えようと思いまして」 どこか気まずそうに、サーミャから視線を逸らすゲート。 妹が目を赤くしながら涙を流していても、青年はそれを拭うことも出来ない。 今まで――家族と呼べるものは、ロゼしかいなかったから。妹とどう接していいのか、彼はそれすらも知らない。 視線避けの結界を張っているので、この醜態が周囲に知られることはないだろう。だが、それでも、ゲートは目の前の妹と、自身の心境の変化に気まずさを隠しきれなかった。 ――……以前の僕なら、この選択だけはしていなかった。 ――自分の妹とこうして話すなど……でも、それは、僕が救われたからだけじゃない。 ――……。 脳裏に思い描くのは、かつて自分がサーミャを殺しかけた時に現れた、一人の青年の顔。 今はいない――好敵手の存在。 様々な出会いと別れがあって、今の自分がいる。 ならば、今の自分は――今のゲート・ファラモスは――もう『復讐者』などではない。 そう思った時には。 ゲートはサーミャを静かに抱き寄せていた。 小さな身体が震え、おずおずと捨てられた子犬のように、少女の腕が背中へと回る。 そして、サーミャは泣いた。何時の日かゲートも泣いたように、少女も――たった一人の兄の腕の中で声をあげて泣いた。 ☆☆☆
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