大怪獣観戦

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同時刻 選手控え室 「……凄い歓声ね」 ランドの建築にしては比較的簡素な造りの一室の中で、サロウは金色の眼を細めていた。 彼女とてこの歓声が何を意味するかなど、理解していない訳がない。 本日行われる、最後の仕合。このラストとクレアの戦いは、ランドの生徒達ならば注目を集めるだろう。 それでも、サロウは心に影を落としたかのように――隣の男へと視線を向ける。 彼女の隣で座り込んでいる男。彼こそ、この試合の主役の一人――ラスト・アバズールに他ならない。 先週まで痛々しく残っていた傷痕は、既に跡形もなく消え去っている。傍目から見ただけでは分からないが、少なくとも身体に不調は見られなかった。 それでも―― それでも、サロウは思う。 ラストにかかる重圧は、生半可なものではないと。才気溢れるランドの精鋭の中でも、頭二つは飛び抜けた存在――それがラストなのだ。 そんな彼が同年代の格上と戦う――それも、こんな衆人環視の前で。 徹底的な挫折を味わうかもしれない――その恐怖が無い訳がない。 仮に、秘密裏に行われる二人だけの戦いだとしたら、そんな思いには至らないだろう。 ならば、ここで白黒付けようとしたのがクレアの差し金だとするのなら―― ――……いや、そんな事はしないでしょう。 ――あの人は、そんな事はしない。 ――……そう。 する訳がない。 あのクレア・フォーリスが、ラストを相手にそんな謀略を敷くなど有り得ない。 だが、だからこそ、サロウは心配そうに隣のラストへと視線を向ける。 「……ラスト」 「…………」 答えはなかった。 元々期待はしていない。サロウが理解できたのは、ラストから醸し出される空気が張り詰めている事だけだった。 「もしも……負けたとしても」 言いにくそうに言葉を濁すサロウ。そんな彼女に、ラストはどこか嬉々とした調子で首を傾げた。 「負けたとしても……って?」 「……?」 サロウがラストの答えに呆けていたのは、一瞬だった。そして、ラストが半ば自棄になってしまったのかと、少女は一層眉をひそめて返す。 「実力差を理解できないほど落ちぶれたの?」
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