大怪獣観戦

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「……確かに」 怪訝そうにこちらを見つめるサロウに、ラストは薄く目を細める。 「俺がいくら期待の新星とは言え、向こうは由緒正しい貴族の坊っちゃんだ。そうなれば、幼少の頃から鍛練を積んでいても可笑しくはない……いくら特権階級とはいえ、いや、特権階級だからこそ、平民を下に見れる実力は付けとかなきゃなぁ?」 「その鍛練の成果が……あの強さ……でしょう? "私もあの人と手を合わせた事はある"けれど、尋常ではないわ」 「俺とお前程度を一緒にするなよ。そもそも……俺が負ける前提でいるのが気に食わないな」 「勝てない、と言っているの」 普段以上に飄々とした態度を取るラストに対し、遂にサロウは唇を強く噛み締めた。 おおよそ戦いの前に掛ける言葉ではないというのは、彼女自身が一番分かっている。 だが、このままでは――ラストが取り返しのつかない所まで、折られてしまうのではないか。 不安と怒りを滲ませ、少女は敢えて現実を突き付けたのだが―― 「いいや、違う……絶対に俺が勝てないというのは、有り得ない」 「本気で……そう思ってるの?」 「分かってないな……重要なのは、これが前以て決められた戦闘という事だ」 「……?」 「仮にクレアが……俺を殺したい程憎んでいたとして……ある日いきなり戦いを挑まれたなら、俺の死は確定的だろう。しかし、一週間の対策期間と戦う場所の指定、時間まで決められて……何もしない馬鹿なんているのか?」 つまり、ラストはこう言いたいのだろう。 有りとあらゆる対策を練り、闘技場にも罠を仕掛けたのだと。そうでなければ、こんなにも余裕そうな表情でいる筈がない。 しかし、それでも――と、サロウは痛む頭を抑える。 「……もしも、貴方の仕掛けた罠とやらがクレアに掛かったとして……その不正は釈明しきれないでしょう」 「バレないようにするさ……というよりも、仕掛けたのは俺じゃない」 「貴方に協力してくれる人なんてランドにいたのかしら?」 サロウの棘が含まれた口振りに対し、ラストは朗らかな微笑を浮かべて返す。 その笑みはまるで、悪戯が成功した子供のように―― 「ランドの生徒、全員だよ」 ☆☆☆
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