おいでよ、つわものどものらくえんへ

5/33

241人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
そこにいたのは、一言では表現出来ない特徴を持つ者達だった。 金髪を床まで伸ばした女性や、上半身の全てに火傷の痕を残す男、グラサンを付けた如何にもチンピラ風情の男――――など"まだいい"。 明らかに悪魔としか呼べない風貌の怪物。巨大な蝙蝠の羽をこれ見よがしに広げる夢魔。 鎖を全身に巻き付け、悶え苦しみながらも恍惚とした表情を浮かべる女。そして、その女の鎖を手綱にしている二足歩行の子犬。 ハッキリ言って、変態としか呼べない集団が、サーミャ達の部屋を取り囲んでいた。 最早、ホラー映画さながらの光景。仮にサーミャがヒロインだとするならば、ここから生き残るには、この怪物達が互いに殺しあわねばならないだろう。 だが、現実はそう辛くない。殺意混じりの威圧感をサーミャから感じ、怪物達は口々に罪を擦り付けあう。 「えーと、おはよう」 「もう昼だね」 「いや、ワンワンはたまたま、この下僕と散歩に行こうとして……」 「もぐもぎゅ(私はこの子犬に面白いものが見れるからって言われて、着いてきました)」 「テメェ、下僕の癖に……!」 「やはり青春とは良いもの。甘酸っぱい空気……そして二人は指を絡め合い、大人の階段を昇っていくのね」 「幸せは誰かではなく、彼が運んでくると知る」 「そして若さ故のすれ違い」 「い、い……いつか来る別れの時」 「き……かぁ。えーと、きっとまた会える時を信じて」 「手と手を放し、いずれサーミャは俺の元へとやってくる」 「……ルール」 「……」 「…………」 何故かしりとりをし始める怪物達。それ程までに、和やかだった空気は終わりを迎え、サーミャから発せられる殺意が冗談で済まなくなっている。 故に、彼等――サーミャと同じSランカー達は、現実逃避を図っていたのだが―――― 次の瞬間。 スタージャの一角は、巨大な豪風と閃光により、跡形もなく消滅した。 ☆☆☆
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

241人が本棚に入れています
本棚に追加