おいでよ、つわものどものらくえんへ

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ビルの所有者である男からすれば、何ともはた迷惑な行為。 いや、そうでなくとも、目の前で自殺の現場を見るなど後味の悪いものはないだろう。 「馬っ鹿……野郎!!」 叫びながらも、足に力を込めて跳躍する男。 彼もまた、常人の域は大きく超えているのか、そのまま五階の縁へと掴まる。 このままタイミングさえずれなければ、屋上から落ち行く影を捕まえられるだろう。そうでなくとも、命を落とすような真似はさせない。 しかし、事態は男が思いも寄らない方向へと流転する。 結果として、屋上から飛び下りた影が地面に模様を描く事にはならなかった。 その結果だけを聞けば、男が影を救いだしたと取れる筈だ。 そう。 何の問題もない。いや、何の問題もない訳がない。 その影がスタージャの一角から生まれた閃光に巻き込まれ、男の所有するビルの一角へと吸い込まれたのだから。 一瞬の静寂。 そして、僅かな振動。影が突っ込んだ事で破壊されただろう部屋を見つめ、ビルの所有者――グロム・フローレンは呆けたように呟く事しか出来なかった。 「嘘だろ」 ☆☆☆ 「嘘だろ」 奇妙に合致した呟きを放ったのは、それまでサーミャを背中から抱いていた青年――レン・フォーリスだった。 サーミャが顔を真っ赤にさせて放った魔法は、想像以上の威力があったらしく、文字通り部屋のほとんどを消滅させていた。 しかし、そんな程度の事はどうでもいい。 部屋が数個消滅しようが、Sランカーが吹き飛ばされようが、彼等がこんなもので死ぬわけがないのだから。 現在、レンが唇を震わせていたのは、その先の一瞬の光景が原因だった。 サーミャが先刻放った魔法。本来、射程はそこまで長い魔法ではない筈である。 だが、不運にも使い手が使い手であった。 残滓だったとはいえ、サーミャの魔法を一身に受けた影。そして、不幸にもその影が突っ込んだビルの所有者。 その二つを脳内で繋げ合わせ、レンはわなわなと震える事しか出来なかった。 自分達が運命の糸を結んだと気付かずに。 自分達が、渦中へと足を踏み入れたとも知らずに―――― ☆☆☆
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