おいでよ、つわものどものらくえんへ

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二日後 ランド 若き才能を掘り起こし、その芽を開花させる教育機関――ランド。 莫大な学費や多方面の資金援助を、学生の親から受け取り経営を担っているが――どんな世界にも特例は存在する。 一つは、大貴族の子息など血統的な面での才を見込まれた者。 彼等は基本的に、学費などを払う事なく、ランドで切磋琢磨しながら才を伸ばしていく。 癒着や媚びを売っている訳ではない。ランドが行っているのは、いわゆる先行投資なのだから。 ただの凡人から搾っていただけでは生まれない、才能という名の利益。 その利益を生み出す為ならば、たかだか十数人の学費を免除しても痛くも痒くもない。 もっとも、その大貴族の面々からは、それこそ凡人からは想像もつかない程の金銭援助を受けているのだが。 そして、もう一つの特例――それが特待生制度である。 これは血統など関係なく、純粋にその才能を見込まれた者達だ。 例を挙げるならば、三年前、生徒会長の任も務めた事もあるロウナ・セイゼンだろうか。 彼女の出身は、大貴族どころか裕福な商人の家系ですらない。 紅茶の葉を名産とした地区の農家の娘――なだけである。 だが、彼女は莫大な学費や寮への賃貸料など一切払わずに、三年間ランドに在籍していた。何故なら、ロウナには唯一無二の才能があったから。 他人の魔力を操る能力。才能というにはあまりに暴力的で、圧倒的な潜在能力。 一目、他人が扱う魔法を見ただけで、本人さえも知り得ぬ魔力回路を見抜き操作する力は、言うなれば四肢の自由を奪うのと同義である。 そんな才能を持つ者が、仮に他国へと流れたら――国に仇なす組織の元へと行ってしまったら―― それは、国にとって多大な損失だ。 故に、才能を見込まれた者達は、ランドへと無償で在籍出来る。正確にいえば、在籍させられる。 こうした強引な手腕や、才能の有無で生まれる不平等さに声をあげる生徒やその親は少なくない。 だが、そんな声を実力でひねり潰してしまうのが、特待生として在籍する者である―――― 「……いてて」 筈なのだが。 今年の特待生の中で、最も注目されている青年。 ラスト・アバズール。 一年生とはいえ、既にランドの中でもトップクラスの実力を持つラストは、机に伏したまま痛みに顔を歪めていた。
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