おいでよ、つわものどものらくえんへ

11/33

241人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
「消えろ」 「随分と素っ気無いじゃない。声にも覇気が無いわ……ふふ、生徒会長さんにでもやられたかしら? それとも、その護衛さんに?」 「……喋りかけるな」 彼らの不穏なやり取りを前に、背中を濡らす特待生。 それでも、二人は周囲の空気などお構いなしに会話を続けていく。 「ふふ、本当に辛そうね。普段なら、死にたいんだったらそう言え……とでも付いてくるのに。ふふ、ふふふ……今なら何をされても大した事、出来なさそうじゃない」 「……」 「無言でいるのは賢明な判断ね。制服で隠しているけれど、背中にも包帯巻いているんでしょう? 声を出すだけで痛むって? 本当に、一体どこの誰がやってくれたんでしょう? こんなに素晴らしい事を。ほっぺにチューしてあげたいくらい」 「いい加減にしろ」 瞬間。 ラストが全身のバネを駆使し、椅子から跳び上がる。あまりに突然の事に、視界から消えたと錯覚する者もいたが、何のことはない。 ラストの身体は、天井に届いていただけだったのだから。そして、青年は重力に逆らわずに机へと降りると、女の特徴を端的に――憎々しげに吐き捨てた。 「この……蛇女が」 眼前で薄く微笑む少女――サロウ・メディカ。 艶かしい曲線美を備えた身体つきと、細い顎。腰まで長いというのに、枝毛の一本もない深みのある黒髪は、美しいと一言で表せるだろう。 だが、サロウと相対した者が最初に注目するのは、そこではない。 爛々と金色に輝く、瞳。まさにラストが言うような、蛇を髣髴とさせる瞳に誰もが吸い寄せられる。 並の男ならば、萎縮してしまう威圧感を備えた瞳。しかし、当のラストは敵意を隠すことなく、自分の乗っていた机を大きく踏み鳴らした。 「俺がどこで何してようが関係ないだろ? それとも何だ? 俺のこの傷、お前が付けたのか? お前が付けたから、そんな偉そうに俺の前に出て来れるんだよな?」 「何で怒られなきゃいけないのかしら? 私はただ……心配で心配でしょうがないからお見舞いにきてあげただけよ? ふふ」
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

241人が本棚に入れています
本棚に追加