おいでよ、つわものどものらくえんへ

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「見舞い? そりゃ、こんな姿だからな。痛くて痛くてしょうがねぇ……が、何回言わせる? お前に俺の怪我、関係あるのか? それとも、自分じゃ出来ないから他人にやられた俺を馬鹿にしにきたってか?」 「そうだ……という事にしてあげたら?」 「情けなさ過ぎて可哀想になってくるぜ」 互いに火花を散らしあうラストとサロウ。 この二人が険悪な空気を醸しているのは、何もラストが苛立ちを覚えているからではない。 ランドでは度々模擬戦が行われるのだが――早い話、二年でも最強と名高いサロウを、ラストが倒してしまったのだ。 しかも――ラストが特待生として呼ばれた理由の能力を使わずにして。 それまで、氷の女帝などと呼ばれていたサロウからすれば、高くなった鼻をへし折られた気分になっただろう。その日から、サロウは何かある度に、ラストの元へと足を運ぶようになったのだが―― ――……腹立たしい……!! ――テメェが弱いからって、弱りきった今の俺を見に来たってか?  ラストからすれば、この手の人間が一番醜いものとして感じられる。 戦い、それも殺し合いならば、弱りきった所を狙うというのは否定しない。寧ろ、やって賞賛されるべき行動だ。 だが、このような野次馬。弱者特有の――強者が潰れる瞬間を、他人事のように見物しに来る根性が吐き気がする程嫌いなのだ。 「恥ずかしくねぇのか? 今のお前は、周りから相当情けない人間だと思われてるんだよ」 苛立ちを吐き出すラスト。 そんな青年に対し、サロウは僅かに頬を緩める。 「情けないのはどちらかしらね?」 「……」 「そんな机の上に立ってまで言わなくたって、ラスト……私よりも貴方の方が強いってのは、周りのみんなは分かってるんでしょう? ふふ、そんなところがまだまだ初々しいわ……無様に負けたのが、そんなにショックだったの? 言葉が軽いわよ」 心の底から楽しげに、妖艶な声音で紡ぎ出された言葉。 それにラストは、返す事が出来なかった。サロウは金色の瞳で青年を射抜いたまま、尚も続ける。 「それで……どうだったの?」 「……何がだよ」 「スタージャ」
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