おいでよ、つわものどものらくえんへ

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――ちょ?! ――怪我してるって分かってるんだったら……!! 割と容赦の無い勢いで投げられたラスト。普段の彼ならば、余裕の表情で着地をこなすのだが――今の満身創痍の状態では、それすらも出来ない。 先程繰り出した天井への着地さえなければ、まだ余裕もあったのだろうが―― ――余計な所で体力使っちゃってる俺……あぁ、てか……これ。こんなだから筋肉教師、お前結婚も出来ないんだろ、ゴリラがお見合いしてんじゃねぇよ。ウホウホ言われたって分からないっての、それにしても半分動物通し、蛇女と仲良くしろよ、何生まれてくるんだマジで……合成獣……ウホホーイシャー……あぁ、やべ。そろそろ来るわ。 数瞬のスローモーション。身体にとてつもないものがくる、と理解できる間に、ラストは思う限りの呪詛を筋肉教師へと脳内で紡いでから――衝撃。 ――グォ……!! だが、想像してたものとは違う衝撃。身体を打ち付けた時のような、あの息を吐く事すら許されない激痛と苦しみは襲ってこなかった。 見れば、あの仇敵であるサロウが自分を受け止めているではないか。 百八十はある自分を片手で受け止めているのは、流石ランドの特待生と言えよう。 そのまま、無言で笑顔を向け合う二人。片や、何故か分からぬが、怒りの微笑を張り付かせる蛇眼の少女。片や、何らかの心当たりがあるのか、先刻とは違い、媚びる様な笑みを浮かべる青年。 そして、数瞬の沈黙が場を支配し――サロウの容赦ない拳が、ラストの腹を打ち付けた。 「……何となくだけど、随分と失礼なこと考えてくれてたようじゃない?」 「――――!! ――――ッッ!!」 声も挙げれぬほどに悶絶するラスト。それを暫く見つめながらも、サロウは僅かに口角を上げて問いかけた。 まるで、蛇が獲物である蛙を見つけた時のように。 「……部屋まで送ってあげる?」 「…………お願いします」 ☆☆☆
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