おいでよ、つわものどものらくえんへ

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ランド 男子寮 「……で、何で、お前が俺の部屋にいるんだ?」 「流石に酷いわねぇ……」 目を覚ますと、そこには見慣れた天井があった。平凡といえば平凡な目覚めだが、二日前に見慣れない天井を目覚めにしたラストにとって、それは重要なものである。 とはいえ、許容出来ない現実をも目の当たりにしているのも、また真実。 この世の限りの殺意を双眸に乗せ、傍らの少女を睨み付けるラスト。 その少女――サロウといえば、普段の艶かしい、わざとらしさすら感じる口調で話す。 「ラスト、貴方が私に運んでくれ……って頼んだのよ?」 「そんな覚えはない」 「おぶってる時、ありがとうサロウ、愛してるよ……とまで言ってたわ」 「嘘を吐くな、殺すぞ」 「酷いわ、私の母性の塊をずっと揉みしだいていたのに」 「マジで?!」 突然のカミングアウトに動揺を隠せなかったのか、先刻の天井着地以上の勢いで、ラストはベッドから跳ねあがる。 その衝撃たるや、ラストにかかっていた薄い布地が吹き飛ぶ程だ。 だが、何度もいうが、ラストの身体は満身創痍の身。 そのまま激痛で、再びベッドに倒れこむラストの視界に映るのは、腹を抱えてうずくまる長い黒髪だった。 「く、くく……うふ、ふはは……私を……殺す気なのね……」 「う、ぎ、ぐぐぐ……あがぁ……殺す、必ず殺す……」 「駄目、そんな目で見ないで……私、死んじゃうから……あん……お腹痛い、死んじゃうよ……」 妖艶な身体付きをくねらせる様は、垂涎ものであるが、それすらも今のラストには殺意を増幅させる燃料にしかならない。 果たして、殺意と笑いが満ちた空間に、どれだけの時間が経っただろうか。 ようやく波が過ぎたのか、サロウは涙を拭いて憤怒の表情を浮かべるラストへと語りかけた。 「それで……やっぱりスタージャでそんな風になったのかしら?」 「答える義理はない、殺す」 「ふふ、言葉が軽いわ……」 「いいか? 殺す。嘘じゃない、俺の怪我が治った時、それがお前の寿命だ」 「ねぇ、尚更教えてくれてもいいんじゃない? 私への献花だと思って」 「死ね、というか、出てけ。お前を見てると俺の寿命が減る」
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