おいでよ、つわものどものらくえんへ

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「あらあら、随分と嫌われたものね……でも、どうかしら? 少しは楽になったんじゃない?」 「ふざけるなよ、精神汚染が蝕んでるんだ……とっとと消え……?」 ふとした違和感。 成程、確かに言われてみれば、心なしか身体が軽い。 いや、間違いない。 先刻の無茶な動きから生まれた激痛を差し引いても、幾分か身体が楽になっているのが分かる。 ――……これは。 ――単純な治癒魔法とは違うな、身体が再構築されていく感覚とは違う……。 ――痛みが引いていく、というよりも、流れていくって感じ……! 一瞬の耽り。そして、ラストは気付く。 自分の隣で腰かけているサロウの顔色が、徐々に悪くなっていっている事に。 「……テメェ、止めろ!」 「あら、痛い」 強引にサロウを払い除けると、彼女はわざとらしく悲鳴を挙げて倒れこんだ。 恐らく、悲鳴を挙げたのはわざとだが――倒れこんだのは、サロウの能力の影響だろう。 サロウの生まれ持った能力――いや、その力の性質上、呪いか病と言うべきソレ。 『変感体質』 蛇のような変温動物は、周囲の気温に合わせて己の体温を変動させる。 勿論、サロウは人間である為、体温は常に一定を保っているが―――― サロウは代わりに、対象の存在と触れ合う事によって、対象の力などを一時的に吸い寄せる事が出来るのだ。 対象の任意さえあれば、記憶も吸い取れるこの能力。それが呪いとさえ呼ばれるのは、対象の痛みや病をも吸う事が出来るからだ。 ある地域では、『変感体質』の人間が、医者として使われていた事もあるらしい。 だが、医者とは名ばかりで、実際は生贄のようなものだったらしいが―――― サロウが吸いとったのは、ラストの痛み。吸われた痛みの量、つまり、ラストが楽になった分の痛みを考えると、相当な負担がかかっていると推測出来た。 「……テメェ、何やってんだ! これは俺の不始末だぞ……お前が何かする領域じゃねぇんだよ!」 堪らずに激昂するラスト。それでもサロウを殴り飛ばさないのは、彼が人であるが故だった。 「ふふ、大きい声……出さないの。何も思う事ないわぁ、私はちょっと料金払っただけなんだから」
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