おいでよ、つわものどものらくえんへ

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「……?」 いきなり料金などと言われた所で、意味など繋がる筈もない。訝しげに睨み付けるラストに対し、サロウは大仰に肩をすくめた。 「私も、スタージャの門を叩こうと思っていた所なのよ……そんな時に、貴方がその身体で帰ってきたら、普通の人間ならどう思う?」 ――お前は普通の人間じゃないだろう。 心の中で毒づきながらも、確かにとラストも思う。 確かに、自分でもサロウが満身創痍の姿で歩いていれば、少なからずスタージャが原因だと思うだろう。 そして、その情報を得ようとする筈だ。 ランドでは絶対的な強者である彼女が、ここまでの姿となるスタージャとは、一体どんなギルドなのかと。 思慮にふけるラストの様子に、サロウは続ける。 「ラスト。貴方は私よりも……ああいう向かい合った空間でなら、強いのよ? そんな貴方がこんな風になったのだから、知りたいでしょう……? スタージャの情報」 「それが……料金に繋がるのか」 「あらぁ?」 普段よりも低い声で呟くラスト。そんな様子に、サロウは真剣な表情から一変、喜色満面といった様子で、 「もしかして……私がただ貴方の身体を心配して、治してあげたくて、恋い焦がれてやってあげたと思ったの?」 「…………はぁ?!」 「あらあら、可愛いじゃない……本当に。純粋なのねぇ、もう……それならそう言ってくれればいいのに」 「ば、馬鹿言ってんじゃねぇ!! 調子に乗りすぎだろうが!」 「もう、そんなに照れないの……顔真っ赤よ。ほら、お姉さんに任せなさい。全部……してあ、げ、る、か、ら」 「とっとと消えやがれ!」 自分の枕を思いきり投げ付け、サロウの視界を封じたラストは、そのまま少女を部屋から引きずり出す。 ――あんの野郎! ――何をほざいてやがる! 閉め出してから、幾度かノックが響いていたが、もう諦めたのだろう。 扉の前に、サロウの気配はない。 ――……今度会った時には……!! ラストは肩で息を吐きながら、未だに心中で呪詛の言葉を並べ立てる。 そんな折に、ふと気付く。 自分の身体が、驚くほど軽くなっていた事に。 ――……料金分くらいの情報は教えてやろう。 ――半分、だけどな。 ☆☆☆
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