おいでよ、つわものどものらくえんへ

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そう言って、自分の前を颯爽と歩く男は、周囲の雅を集約させた世界に目もくれずに歩んでいく。 彼にとって、このような世界は見慣れたものなのだろう。 ただの強者とは違う。洗練された動作、そして醸し出す気品は、いやでも目前の男が貴族の関係者なのではと想像させた。 「『遺伝子』さん」 「……ん?」 後を追いながら、問いかけるラスト。対し、『遺伝子』と呼ばれた男は、顔を向ける事はしなかったが、素っ気ない調子で返した。 「何か、受付の方過ぎていっちゃうんですけれど……」 絨毯を踏み締めながら歩んでいく二人。 どれだけ歩いても終わりが見えないエントランスだと思っていたが、流石に果てはある。 しかし、どうにも不自然なのは、この『遺伝子』なる男が、ずらりと並ぶ受付へと向かおうとしない事だった。 最初は、様々な人種の美女たちが並ぶ受付に目を見張らせていたラストだったが、徐々に不安を覚えてしまう。 だが、答えは単純なものだった。 「あぁ、お前がやるのは、Aだから」 「……?」 「ここの受付は、B以下しか取り扱ってないんだよ」 「……!!」 ――嘘だろ? アイツ等が……? 驚愕と共に再度見渡しても、明らかに自分以上の実力を持つであろう人間も存在する。 ならば、自分がそれ以上の領域に踏み込むのは、最早無礼とすら言えるのではないか? そんな感情で、背筋を凍らせるラスト。だが、『遺伝子』は青年の思惑を知ってか知らずか、事もなげに語り続ける。 「とは言っても、基本的にB以下は採集と討伐が主だからなぁ……普通にAランカーも受ける事がある」 「じゃ、じゃあ……あの大男とか、あの長剣携えたエルフとかは……?」 「……んー、分からん。見たことないし、適当な事言ってもなぁ」 目前の男は、チラリと指を指す方向に視線を向けると、興味無さげに語った。 そんな調子に、ラストは思い耽る。『遺伝子』という男は、まるで先生のようだと。 実力が離れすぎているが故に、自分には強者に見えても、彼等にとってはそれらが道端の石ころにしか感じられないのかもしれない。 無論、自分をも含めて。 ――……しかし、改めて観察すると、この人も相当怪しいな。
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