おいでよ、つわものどものらくえんへ

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「……暗殺じゃあ認められないわよ、強さなんて」 「それは、暗殺に磨きをかけてる奴に失礼だろ。だが、確かに俺が求めてる強さとは……違うだろうな」 仮に、ランが自分を殺す気だったとすれば、あの扉をくぐった瞬間に殺されていてもおかしくはない。だが、こうして正面から向かい合えば、体術だけならばこちらに分があるだろう。 そう考えれば、先程までランに抱いていた懸念が、いかに滑稽だったのかも理解できる。 本当に自分をどうにかする気なら、もうこうして立っていられないのだから。 「じゃあ、どうする気なの?」 「それはお楽しみ、って話だ……ここで教えちまったら、お前がどこかで漏らすかもしれないじゃないか」 「……ふぅん」 ランは考える。この青年――いや、少年といってもいい子供に満ち溢れる自信の要因を。 『遺伝子』から受け取ったラストに関しての資料には、確かに非凡な才能が羅列されていた。 三年前は、ほとんどのスタージャのランカーが活用し、今では僅か一握りの怪物しか扱えない魔法。それはあの『遺伝子』や『全帝』といった同年代の怪物ですら、その魔法を使うことは出来ないのだ。 ラスト・アバズールが、アレの手先である可能性を捨てきれない。 あの魔法を本当に駆使できるのなら、最もSランクに近いAランカーも倒せるかもしれない。だが、ここで若い才能が枯渇するかもしれない――泳がせる餌が喰われるかもしれない―― 「……監視者を付けるわ」 しばらくの沈黙を経て、ランが出した結論はラストの眉をひそませるには充分すぎるものだった。だが、少年が声を上げる前に、ランは手でそれを制する。 「貴方はランドの星なのよ。これでもしも死にでもされたら、私が殺されちゃうかもしれないわ……これはスタージャのどの受付に言っても言われるでしょうね」 「まだ確認もしてないのにか? あんたは優秀な受付だろうが、中にはボンクラな受付だっているだろ? ソイツに頼んでみても同じ結論になるか?」 「私が優秀なのは確かだけれど、何の実績もない貴方がAランクの仕事を申し込んだ所で、一蹴されるのがオチよ。それに私だって貴方がレンちゃんの紹介じゃなかったら、Aには受けさせないわ」
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